唐鎌大輔氏:ドル円は90円台前半が主戦場に

米ドル

みずほ銀行の唐鎌大輔氏が、今や少数派となったドル安予想を継続している。
唐鎌氏のドル円予想は、年度内に100円割れが定着し「90円台前半を主戦場とする展開へ移る」というものだ。

唐鎌氏はReutersへの寄稿で、現在のリスク・オンを選挙前の手控えの反動であるとし、今後は円高ドル安傾向に転じると予想している。

ドル安の臭いしかしない

唐鎌氏は昨年来、FRB利上げサイクルが頓挫すると見てドル安を予想してきた。
誰が大統領になろうと「論点は不変であり、2017年にかけての為替相場は過去2年半続いたドル高相場の本格的な調整(ドル安)を経験する年になると予想」していた。
さらに、トランプ氏の政策は「どこを切り取ってみてもドル安の臭いしかしない」という。
その上で、トランプ勝利後のドル高傾向について、次のように分析している、。

「そもそも選挙を前にリスクテークが控えられていたことの反動もありそうである。
政治経験のない同氏の議会運営への不安は覆い難いものがあり、トランプショックの影響はこれから顕現化してくるのではないか。」

トランプ勝利直後のリスク・オフも、その後のリスク・オンも市場の反射的な反応にすぎないのかもしれない。
正解がどこにあるのかは、トランプ氏が一貫性のある政策を語り始め、市場がそれを冷静に解釈するのを待つしかないだろう。
唐鎌氏は、基軸通貨国の大統領が為替の希望を公言すれば「未曽有の脅威」になり得ると書いている。
それほどこれまでのトランプ氏の発言には規範・整合性が欠けていた。

ドル安の臭い

確からしい前提が起きにくい中、唐鎌氏が注目する点を棚卸しておこう。

  • そもそものスタンス: トランプ氏は「はっきりとドル安方向」、当局ももともと「ドル高に不寛容」
  • 財政: 財政悪化はドル安要因を連想させる一方、効果的な財政出動は金利上昇を通しドル高要因に
    しかし、財政支出拡大は議会共和党と方向性が合わない
  • 保護主義: 実体経済悪化がFRB利上げを頓挫させドル安要因に
  • 為替レート: 1-9月、円は対ドルで16.2%上昇したが、ドルの名目実効為替相場は2.7%しか下落していない

金融政策は脇役に

久しぶりに面白い相場になった。
世の中ではかなり尖鋭にドル高派とドル安派に分かれつつある。

  • ドル高派: 金利差の動向に着目
    財政拡大などの政策が米金利の上昇をもたらす。
    米利上げは進まない。
  • ドル安派: 政治の意向に注目
    米政府がドル安を望む。
    日本の金融政策が転換点を迎える。

「面白い」のは、金融政策が主役の座を降りつつあるように思われるからだ。
この数年、日米ともに危機は終わったと宣言しながら、平時とは思えない金融政策が維持され続けてきた。
実体経済からかけ離れた金融政策の動向に市場が振り回される展開だった。
それが、少しずつ変化している。

財政政策も人為的なものではあるが、それが為替などに影響を及ぼすのはある程度実体経済のフィルターを通った後になる。
久しぶりに、経済の中身を真剣に見つめる時が来たのかもしれない。
それこそ金融市場や投資家が社会に貢献する本質的な作法であるはずだ。