佐々木融氏:トランプ勝利ならドル安ではない

佐々木融

JP Morganの佐々木融氏が、米東海岸の投資家コミュニティの大統領選に対する見方を伝えている。
大統領選の行方とともに為替の方向性を予習しており、私たちの勘違いを指摘してくれる。

佐々木氏がReutersに寄せたコラムから興味深い部分を読み込んでおこう。

佐々木氏は、トランプ勝利なら「『ドル円相場は少なくとも一時的に急落する可能性が高い』との共通認識」があるという。
これは多くの日本人の認識とも一致するところだろう。
佐々木氏は、この予想に同意しながら、極めて重要な指摘を添えている。

「ただし、この場合のドル円急落予想は、決して『トランプ候補当選=ドル安』というロジックではない。
主にリスク回避姿勢の強まりによる『ドル高・円高』予想である。」

つまり、リスク・オフの流れでドルも円も買われるというのだ。
その際、円の方が巻き戻しが大きいためより多く買われ、ドル円で言えばドル安円高となりやすい。
では、ドルや円が買われる一方、何が売られるのか。
トランプ氏が槍玉にあげているNAFTA相手国の通貨、メキシコ・ペソやカナダ・ドルである。

これは、大統領選直後についての予想である。
一方で、中長期的な話になると少々ニュアンスが違ってくる。

「トランプ候補より民主党のヒラリー・クリントン候補が大統領に当選した方が、全体的に保護主義的な色彩が強くなることから、ドル安方向に進むとの見方が優勢だった」

中長期的な話になると、クリントン氏はやはり米民主党のリーダーなのである。
一方、トランプ氏は親ビジネスの側面もあり、投資家コミュニティの中には期待感も小さくないという。

「減税や財政支出の拡大から景気が良くなり、株価が上昇、インフレ率も上がる。
多くの不法移民が国外追放となるため、労働市場がひっ迫し、賃金も上がる。
ハト派的なイエレン米連邦準備理事会(FRB)議長が交代する可能性も高く、金利は上がることから、中長期的にはドル高になる。」

佐々木氏は、トランプ氏勝利の確率は「依然として巷間言われているよりは高いのではないか、と感じさせられた」という。