佐々木融氏:アベノミクスと異次元緩和の岐路

佐々木融

JP Morganの佐々木融氏が、市場におもねるような政府・日銀の政策に疑問を呈した。
市場がヘリコプター・マネーへの期待感を高める中で、何が最終目的なのかを再度思い出すべきという。

金融緩和の限界が近づく

7月末の追加緩和は市場予想に届かなかったと佐々木氏はReutersに寄せたコラムに書いている。
さらに、日銀の金融政策が限界に近いとの印象を持ったと吐露している。

「日銀が金利も国債購入額も変更せず、株式購入額だけを増やしたことは、日銀自らが、金融政策の限界が近づき、今後、財政政策に頼らざるを得なくなっていることを示しているようにも見える。」

金融政策限界説は、多くの市場参加者も抱きつつあるものだろう。
佐々木氏が最近尋ねた米・豪の投資家にもそうした変化が見られるという。

「受ける質問のほとんどは、補正予算の規模やヘリコプター・マネー、永久債などについてであり、実は日銀の金融政策に対する質問は少なかった。」

海外投資家も、日本のヘリコプター・マネー実施を期待しているのである。
しかも、ここでいうヘリコプター・マネーは、永久債の割り当てをともなう狭義のヘリコプター・マネーである。
つまり、日銀に永久債(紙くず)と引き換えに資金を供給しろというものだ。
確かに、こうすれば、リカードの等価定理は崩れ、量的緩和の巻き戻しさえ必要なくなってしまう。

狭義のヘリコプター・マネーの末路

外国人は、2%のインフレ目標のためにこうした乱暴極まりない社会実験を日本に期待しているのだ。
対する佐々木氏の反応は

「日銀が保有する380兆円の国債を、紙くず同然のゼロクーポンの永久債と換えてしまったら、その見合いで日銀のバランスシートの負債側にある銀行券と当座預金も紙くずと同じになる。
つまり、国民が所有する紙幣と、預金の一部が紙くずになる。」

というものだ。
理屈どおりの考え方である。

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