佐々木融氏:いずれ米長期金利もドルも反落へ

佐々木融

JP Morgan佐々木融氏が、急速に進む円安ドル高についてコメントしている。
かねて円高を予想していた佐々木氏にとってはしばしの間の敗北となるが、敗戦の弁の中には得難いアングルが含まれているのではないか。

予想外の円安ドル高

佐々木氏は米大統領選前、米長期金利には短期的には低下要因があり、日米金利差縮小による円高が起こりやすいと指摘していた。
トランプ勝利後いったん円高が進み、逆に円安が急激に進んだ局面では108円台あたりでピーク・アウトするのではと言っていた。
しかし、ドル円はその後も上昇を続け、一時113円台をつけるに至っている。
佐々木氏はReutersへの寄稿で、率直に「ドル円相場がここまで歴史的な急騰を見せるのは全くの予想外だった」と敗戦の弁を述べている。

予想外だったのはドル高のペース

予想を外したのは何も佐々木氏だけではない。
いや、実は半分予想を当てているのだ。
佐々木氏は早い時点から、トランプ勝利の場合、円高・ドル高が進むと予想していた。
さらに、円安を予想した人は多かったが、このペースの円安進行を予想した(まともな)市場関係者は皆無に近かったはずだ。

この円安がどれほど想像しにくかったか、佐々木氏の観察から学んでおこう。
ドル円は、直近の終値のボトムである11月3日から3週間で10%上昇している。
このペースでの上昇は1995年以来という。
1995年の円安ドル高と言えば、米サマーズ財務長官(当時)と榊原英資財務官(当時)が急激に進んだ円高に対処するため協調介入を行った年だ。
今回の場合、為替介入も金融政策の変更もないのに、これほどのペースを予想するのは難しかったろう。

損切りで加速した金利上昇・ドル高

では、なぜこれほど速いペースでの円安ドル高が進んだのだろうか。
佐々木氏は2つの仮説を設けている。

円の事情: 投機的な円ロングの損切り
今回の円安には円ロング・ポジションの巻き戻しという性格があったとし、そう推測する根拠を2つ挙げた:

  • 新興国の高金利通貨と円という超低金利通貨がともに弱くなった。
  • 日米長期金利差0.10%拡大に対するドル円相場の感応度が選挙前1.6円から選挙後3.0円に増大した。

ドルの事情: 債券ロングの損切り
今回の米長期金利上昇スピードは2013年のバーナンキ・ショックと同等またはそれ以上。
佐々木氏は、トランプ次期大統領の政策に景気押し上げ効果があると認めつつも「これほど米長期金利が急速に上昇するのはやや違和感がある」とし、米長期金利の上昇の背景には異なるストーリーがあるのではと示唆している。

「日銀がイールドカーブコントロールを採用し、量的緩和政策の限界を暗に認めると、世界の長期金利は上昇し始めた。
こうした流れが、米大統領選におけるトランプ氏の勝利により加速し、世界の投資家の債券買い持ちポジションの損切りを加速させている可能性も考えられる。」

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