佐々木融氏:「総括的検証」は追加緩和じゃない

佐々木融

JP Morgan佐々木融氏が、昨日発表された日銀の「総括的な検証」についての「違和感」を明かしている。
日銀の苦しい説明に内在する矛盾を指摘し、今回の検証は少なくとも追加緩和ではなかったと斬って捨てた。

佐々木氏はReutersへの寄稿で、「総括的な検証」についての多くの違和感を表明している。
順に紹介しよう。

オーバーシュート型コミットメント

日銀が新たに導入した「オーバーシュート型コミットメント」とは何か。
コミットメントとは約束。
オーバーシュートとは行き過ぎること。
どうやら「オーバーシュート型コミットメント」とは、従来は《2%インフレを持続するまで続ける》だったのを、今後は《2%を超えるまで続ける》に変えたことを言っているようだ。
佐々木氏は、こう疑問を投げかける。

「特に新たな緩和策を導入せずに、なぜ人々の予想物価上昇率の期待形成メカニズムがフォワード・ルッキングに変わるのだろうか。
『2%に届かせる』と言っても信じてもらえないのに、やっていることも変えずに『2%を超えるまで』と言い換えても誰も信じないだろう。」

適正なイールドカーブ

日銀は長短金利操作によってイールドカーブをコントロールすると発表した。
言うまでもなく、フラット化しすぎたイールドカーブを立ち上げたいとの目的だ。
その背景には、金融機関の財務悪化があろうし、金融仲介機能の不全があるのだろう。

佐々木氏は、そうした事情を理解しつつも、

「なぜ現状程度のイールドカーブの形状が適切と言えるのかについて説明がない。
日銀は10年物国債金利をゼロにアンカーさせることに重点を置いているようにも見えるが、なぜ10年物国債金利のゼロ%が適切なのだろうか。」

と批判している。
確かに、理想のイールド・カーブについての説明はなかった。
批判されたから取り繕っただけなのではないかと思われてもしかたあるまい。
実際、10年ものを0%とすれば、超長期の運用が多い年金・保険は助かるだろう。
しかし、信用創造の立役者であるはずの銀行にはたいした助けにならないはずだ。

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