佐々木融氏が危惧する1ドル=1万円の時代

佐々木融

JP Morgan佐々木融氏のコラム「なぜドル円だけが3桁なのか」が秀逸だ。
《座布団5枚!》と言いたくなるような緻密な構成で中身の濃い文章に出来上がっている。

今回の佐々木氏のコラムですばらしいのは、考え抜かれた構成だ。
まずタイトルで耳目を引く。
理解しているように思うが、本当に正しいかどうか自信がないから、中身を読まざるを得ない。
中身を読んでいくうちに、コンパクトにまとめられた物語の方に引き込まれ、タイトルの問いなど忘れてしまう。
そして、読み終わるとともに、座布団5枚の落ちが語られる。

落ちを聞いた時、ああそうだったとタイトルの記憶が戻る。
それと同時に、読者の思いはタイトルの問いから佐々木氏の思いの方に居所を移していく。
メンタリストさながらのよくできた構成だ。

よくまとまっており、かつ、わかりやすい。
また、落ちもあることなので、読者自身で読まれることを勧めたい。
この1本のコラムで、新書3冊分ぐらいの価値がある。

エッセンスだけを一部紹介しよう。
このコラムを通して、佐々木氏は過去の日本の失敗をいくつか挙げている。

思えば、アベノミクスの当初3年間は、よくも悪くも金融政策依存の政治だった。
初年度こそ財政拡大が見られたが、その後2年は財政面では控えめだった。
そして今、少なくとも世の中の雰囲気だけをとれば、財政拡大賛美が優勢となった。
金融政策はすでにフル・スロットルに近い。
金融・財政政策を同時にふかせば、その効果はヘリコプター・マネーに近づく。

確かに、インフレを実現したいなら、金融緩和とともに財政拡大することは有効だ。
しかし、それによって日本が過去の似た歴史をなぞる危険性が大きいとすれば、果たして正しい選択なのか。
危ない橋を渡らなければいけないほど、インフレ目標は有用・重要な目標なのか。

佐々木氏はコラムをこう結んでいる。

後世の為替ストラテジストが、なぜドル円だけが5桁なのかを説明する時のキーワードは、「アベノミクス」「量的・質的金融緩和(QQE)」なのだろうか。