リチャード・クー:出口で待ち構える悪夢

リチャード・クー

野村総研のリチャード・クー氏が、ヘリコプター・マネーの損得勘定について書いている。
クー氏はヘリコプター・マネーの重要な要素である量的緩和の出口での困難を強調している。

クー氏が唱えてきたバランスシート不況では、金融政策では景気刺激ができない。
いくら金融緩和をしても、過去のトラウマに怯えバランスシート調整を進める民間セクターはお金を借りようとしない。
結果、信用の種(マネタリー・ベース)は増えても信用創造は進まない。
こうした環境では、政府が最後の借り手の役割を果たし、支出を行うべきと主張している。

積極財政派であるクー氏も、「ヘリコプター・マネーのコスト・ベネフィット分析」と題するレポートで、ヘリコプター・マネーに対して否定的見方を述べている。
ヘリコプター・マネーでの資金調達として想定されているマネタイゼーションの反動が大きいと心配されるからだ。
クー氏は出口で起こることをこう説明する。

「最後には、民間セクターがバランスシート調整を終え、お金を借り始める。
そうなると、中央銀行が量的緩和やヘリコプター・マネーで市場に注入した流動性を取り除かない限り、インフレが制御できず急速な連鎖を始めかねない。」

クー氏は例としてFRBの場合で説明する、。
FRBが預かる超過準備は法定準備預金額の15倍に上る。

「これは、企業や家計が借り入れ意欲を取り戻すと、米国のマネー・サプライが現在の15倍に膨れかねないことを示唆している。
インフレは1,500%になってしまう。」

クー氏は、超過準備の倍数について、日本・スイス28倍、EUが5倍、英国が11倍と紹介している。
こうした国・地域でもインフレが起こり、為替市場でも(量的緩和を行わなかった国の通貨に対し)通貨が下落することになる。
1,500%が正しいかどうかはわからない。
もっと少ないとする議論もあろうし、ハイパーインフレは止まらないという議論もあろう。
仮に、1,500%が200%であったとしても、国民生活を過酷にすることを忘れてはいけない。

クー氏は、これを防ぐために、各国は急激にマネー・サプライを吸収することになるという。
日銀の場合は1/28にだ。

「そうした急激な超過準備の減少のためには、中央銀行は保有する債券を売却するしかない。
これは、経済にとっても債券市場にとっても悪夢になるだろう。」

インフレ基調の中での債券放出は金利の急騰を意味する。
市場金利の急騰は急激な金融引き締めを意味し、同時に資産価格の急落要因となる。