ホルムストロム:株式か、現預金か

米ドル

今年のノーベル経済学賞は「契約論」を考案したOliver Hartハーバード大学教授とBengt Holmström MIT教授に贈られた。
そのホルムストロム教授が昨年BISワーキング・ペーパーとして発表した論文が興味深い。

当たり前のことなのだが、ホルムストロム教授は、短期金融市場が本質的に株式市場とは異なると釘をさす。

  • 株式市場とは、リスクを効率的に配分する目的で価格発見するもの
  • 短期金融市場とは、借金を超える担保を用いて借入れコストを減らし、価格発見の必要をなくすもの

であるからだ。
この説明自体、民間の市場参加者からすれば新鮮味のあるものだ。
こうした性格の違いが忘れられ、金融政策が誤った議論のされ方をしているとホルムストロム教授は警告している。

「最近の金融危機に触発されたクレジット市場改革の試みにおいては、しばしば株式市場への理解に基づく考えに頼る例が散見される。
これは大きな誤りだ。
・・・
債務とは情報に対し敏感でないものだ。
この側面こそ、どうして不透明感がしばしばクレジット市場の流動性を改善し、どうしてすべての金融パニックは債務を巻き込むのかを説明してくれる。」

このワーキング・ペーパー自体は、金融政策のあり方を議論するために書かれたものだ。
民間の市場参加者からすれば眠たい話かもしれない。
しかし、先ほどの新鮮味のある定義と同様、下記の比較表は私たちにとっても意味深いものなのではないか。
株式を持つべきか、現預金を持つべきか、そのヒントになるかもしれない。

株式市場と短期金融市場の違い (BISワーキング・ペーパーより)
 株式市場 短期金融市場
 リスク・シェア 流動性確保/運用
 価格発見 価格発見の不要化
 情報に敏感 情報に敏感でない
出来高は変動 出来高は安定
 透明 不透明
 情報への投資が大  情報への投資は控え目
 トレーダー多(取引所) トレーダー少(相対)
 売買は緊急ではない 売買は緊急

思えば、この四半世紀以上にわたって私たちは超長期的な金利低下局面を経験してきた。
この期間はまた、ディスインフレ/デフレの期間でもあった。
金利低下局面とは、債券がキャピタル・ゲインを生みやすい局面である。
ディスインフレ/デフレ局面とは、株式がキャピタル・ロスを生みやすい局面だ。

この間、私たちの株式・債券に対する観念は少々変化しているかもしれない。
現在、世界的に債券が買われているなどは、その最たるものと言えるだろう。
ところが、金利・インフレの動向がひとたび反転すれば、こうした行動は思わぬしっぺ返しを食らう可能性を秘めている。
今こそ、原点に返って資産クラスの本来の性質を見直す時期かもしれない。