ヘッジ・ファンド業界凋落のワケ

米ドル

ヘッジ・ファンド業界が劣悪な運用成績に喘いでいる。
なにかヘッジ・ファンドにとって深刻な変容が市場に起こっているようだ。

インデックス・ファンドが我が世の春を謳歌している。
先日は、同分野の先駆けバンガード創始者Jack Bogle氏がパッシブ運用の優位性を説いていた。
方やBloombergはヘッジ・ファンド業界の窮状を伝えている。
ヘッジ・ファンドとは大胆な形でアクティブ運用を行っている投資家と言え、パッシブ運用との明暗がはっきりと分かれた形だ。

なぜこうもヘッジ・ファンドの運用環境は悪化したのか。
むろん、同業界の考え・振る舞いに根差す問題もあるのだろう。
アクティブ運用がパッシブ運用より高コストになるのもやむを得ない。
しかし、これだけのことでは現状の不振の説明はつかない。

Bloombergは2013年からの4年間、ヘッジ・ファンドに対してバンガードが大勝している様子を図示し、ヘッジ・ファンド・マネージャーの悲鳴を伝えている。

「投資家の多くが、彼らが知っていると思っていることがもはや重要性を失っているのではと認識しつつある。
もはや理屈の通らない投資の世界に囚われてしまったというような感じだろう。」

「アルゴリズム売買やETFが値動きを荒くし、同一産業内の銘柄の値動きを同期させ、単一銘柄への賭けの分を悪くした。

10年前にはなぜサブプライム・ローンが価値を失ったか理解できたが、日本やデンマークのマイナス金利が何を意味するのかは理解できない。
2008年以前のほとんどの期間には、ロジックに基づくセオリーがあった。
しかし、ゲームは変わり、論理的な投資家が新たなセオリーを見いだせないでいる。」

「自分の投資スタイルはもううまくいかない。」

「金融危機が投資環境を劣悪にした。」

「コンピューターが動かす市場は、自分たちがやっていた方法とは相いれない。」

「金融危機は多くの人にとって心臓麻痺のような突然死のようなもの。
しかし、これ(現在の状況)は多くの人にとってガンのような時間をかけた死のようだ。」

廃業はもはや極端なケースではなくなり、中には犯罪に手を染める輩まで現れる。
こうした現象から推測されることは、過去の運用手法が通用しない市場に変貌しつつあるということだ。
犯人像はいくつか挙がる: インデックス・ファンド、アルゴリズム売買、ゼロ金利政策、金融規制、不透明な世界経済、投資の技術革新、過当競争、・・・。
こうした犯人像のいくつかは、かつて何かにつけてヘッジ・ファンドを犯人役にしてきた当事者でもある。
ヘッジ・ファンド業界は凋落することで悪役を脱することができたらしい。

ヘッジ・ファンド業界の苦悩はヘッジ・ファンドだけに限った話だろうか。
それとも、アクティブ運用に敷延できる話だろうか。
仮にアクティブ運用にも広く似た現象が及んでいるなら、個人投資家やアクティブ運用の機関投資家にも苦難の時が訪れていることになる。
市場の多様性・深みをもたらすこうした投資家がアクティブ運用への熱意を失うことは市場にとって望ましいことではない。
投資に熱意をもった投資家にとっても、パッシブだけにしか配分しないというのは自身のアイデンティティを失うような苦痛であろう。
そして、一番の疑問は、こうした現象が一過性のものか恒常的なものかという点であろう。