ピーター・シフ:夢の世界のマイナス金利の道

ピーター・シフ

Euro Pacific CapitalのPeter Schiff氏が、マイナス金利政策を厳しく批判した。
マイナス金利下での社債・株式買入れは、実体経済を刺激しないばかりか、企業を実業から遠ざけてしまうという。

借り手が儲かる時代

ピーター・シフ氏はETF Daily Newsへの寄稿で、マイナス金利政策の弊害を説いている。
シフ氏は、独Henkel AGや仏Sanofi SAがマイナス金利の社債を発行したという報道にショックを受けたのだという。

「その債券を償還期限まで保有すれば損をし、企業の側は借金をすることでお金が貰えることを意味する。
驚くべき展開であり、企業戦略の根本的原則を変えてしまう。」

社債ではなく国債であれば、マイナス金利は珍しくなくなった。
それが、社債でも起こった。
利益追求を重要な使命とする民間企業でのこうした変化は、企業行動を大きく変えかねないものだ。
そして、それが社会にとっても不利益になるとシフ氏は論じている。

「お金を借りて、借りた額より少ない金額を返済すればいいとなれば、利益を得るために、どうして苦労が多く不確かな営み(新製品開発、新規顧客開拓)をしなければいけないのか。
(マイナス金利で借金することは)間違いのないやり方だ。
厄介な労働契約もなく、R&Dもなく、中央銀行の買入れが無限なら、いくらでも拡大できる。」

借りて儲かるなら実業はやらない

もちろん預金にマイナス金利がつくようになれば、現金の保管などのテーマが発生してしまう。
そうした点を許せば、シフ氏の主張はその通りだ。
そして、シフ氏はこのことが実体経済に与える影響を語る。

「通常、企業がプラス金利でお金を借りる場合、そのお金は何らかの生産的な用途に用いられなければならない。
貸し手に元本と金利を返し、企業努力に見合う利益を生まなければいけないからだ。
しかし、今やそのハードルは取り払われ、企業は借金する際、何の価値も生まなくてもよくなった。
ただ借りればいいだけだ。
借金自体が利益を生んでくれる。」

金利を押し下げていき、ついにゼロ金利になる。
そこからさらに金利を押し下げても、実体経済の拡大につながらない。
シフ氏の指摘は、流動性の罠の一側面を指摘したものといえよう。

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