ピーター・シフ:モルヒネをやめ立ち向かえ

ピーター・シフ

Euro Pacific CapitalのPeter Schiff氏が、金融政策頼みの経済回復にダメ出しをしている。
金融政策はモルヒネにすぎず、それに頼ることなく傷を癒すべきと主張している。

今回シフ氏が寄稿したのはlewrockwell.com
リバタリアン(完全自由主義者)系のメディアだ。
それだけに、寄稿の内容はより思想的な色彩が強くなっている。

テーマは経済安定化政策の是非である。
短・中期的な経済循環を金融・財政政策で平準化すべきかどうか。

「本当の選択は、今、不況を甘受するか、先延ばしするかではない。
今、大不況を甘受するか、将来、壊滅的な不況を受け入れるかだ。」

シフ氏には《100年に1度の危機》と言われたリーマン危機後の不況について、その根本原因が解消されていないとの認識がある。
そうした認識からすれば、すでに世界経済は大きな問題を先延ばししてきており、つけを払うのが今でも将来でも極めて大きなものになると考えているのだ。

「いずれにせよ、FRBの金融政策ではそれに対処することはできない。
FRBが弾切れだからではなく、FRBは最初から本当の弾丸を持っていなかったからだ。
FRBが持っていたのは、傷がうんでいく時に痛みを麻痺させるモルヒネだけだった。」

シフ氏は経済安定化政策を問題先延ばしと考えている。
本質的な病根を取り除くことではなく、安定化政策を実施している間も「傷がうんでいく」と考えている。
こうした考えは完全に正しいとは言えなくても、極めて重要で現実的な思考回路だ。

政策決定者は、時にポピュリズム的な事情から、時に安定化政策へのわずかな望みからその政策を実施する。
前者は問題外だが、後者はあながちNoとも言えない。
安定化政策が先食いだけではない可能性も残されている。
金融緩和を進めれば、将来必ずその巻き戻しに同じだけ苦しむことになるのか。
財政支出を増やせば、将来必ず同額を返済しなければならないのか。

もちろんヘリコプター・マネーのような極論を始めれば、先食いではないと言えるのだが、それはつけを他に回すに過ぎない。
結局、安定化政策にフリー・ランチはないのではないか、と考えるのも無理はない。
少なくとも言えるのは、極めて長い期間にわたって金融安定化策を続けるのは避けるべきだ。
仮に全額を返済する必要がなくて済んだとしても、返済がきつくなりすぎるからだ。

「今こそ苦難に立ち向かい、苦痛に耐え、傷が実際に癒えるのを待つべきなのだ。
そうすれば、最後にはNew Normalという考えを葬り、すべての伝統的な恩恵を備えた真の回復を享受し、実際、米国を再び偉大な国にすることができる。」

日頃顧客に対し《米国売り》を説き、金や外国資産への投資を推奨・販売しているシフ氏が「偉大な米国」と書く。
ロジックはつながっているものの、経済人と思想家としてのアウトプットは反対方向だ。
米国は、シフ氏が望むのとは反対の方向に進んでいるとの証拠だろう。
そして、こうしたリバタリアニズムは米国において決してマイナーな存在とも言い切れないのだ。