ピーター・シフ:トランプの財政拡大はドル安要因

ピーター・シフ

Euro Pacific CapitalのPeter Schiff氏が、通好みのドル安予想を披露している。
ドル暴落をライフ・ワークにしている同氏だが、なかなか深読みが効いていてよい。

トランプ勝利後のドル円市場は、一時的に円高に振れたものの、その後大きく円安が進んだ。
主に、トランプ氏の唱える経済政策が米金利の上昇をもたらすとの観測によるものだ。
米政府の意向をいったん忘れ、米ドル側の事情だけで見るなら、このシナリオの説得力は高い。
一方、米政府の意向や日本円側の事情を加味すると、ドル円予想は混沌としてくる。

ピーター・シフ氏は米ドルの側の事情を論じ、ドル安の進行を予想している。
その主張がなかなか通好みの点を突いており、現時点でのリスク・シナリオとして傾聴しておこう。
シフ氏の論点は3点だ。

財政拡大には金融緩和が必要
「財政刺激策のためには、その金融引き締め効果を中和し実行可能とするため、追加の金融緩和が必要になる。
もしもレーガン政権のような赤字拡大となれば、金利が上昇し、ドル高または金融引き締めとなるが、それは不合理だ。」

米政府債務の増大は続く
「金利が上昇すれば政府債務は増え、期待されている経済回復の首を絞める。
FRBが政府と協調して政府債務をマネタイズすれば(債務拡大は可能だが)利払いが劇的に増大してしまう。」

バブルを崩壊させるリスク
「みんなが理解していないのは、FRBがインフレを退治しないということ。
インフレを退治しようとした瞬間、バブル経済を崩壊させてしまう。」

シフ氏の考えの背景には、インフレ退治・金利抑制・金融安定のトレード・オフがあるようだ。

  • インフレ昂進を抑えようとすれば金利上昇を許すことになる
  • 金利上昇を許せば政府の財政が圧迫されるだけでなく、金融市場に混乱が生じる
  • 超低金利を続ければ、政府債務の拡大やバブルの醸成を助長しかねない。

超低金利と政府債務の積み上がりにより、FRBが財政従属に陥っているとの見方である。
FRBが金利上昇を容認できずインフレが昂進するなら、これはドル安要因である。

財政従属のくだりについて言えば、日本の状況は米国よりはるかに厳しい。
日本のせめての救いは、ディスインフレが継続すると予想されていることだ。
一たびインフレ基調に戻ってしまうと、日本も残酷なトレード・オフにさらされることになる。