スティーブン・ローチ:トランポノミクス、金利上昇、ドル安

スティーブン・ローチ

元モルガン・スタンレー・アジア会長Stephen Roach氏が、トランポノミクスについて一歩踏み込んだ視点から分析している。
慢性的な貯蓄不足の中でのトランポノミクスが金利・為替に及ぼす影響まで占っており興味深い。

ローチ氏はProject Syndicateへの寄稿で、トランポノミクスを米国の慢性的な貯蓄不足と関連付けて論じている。

「将来の繁栄のための種子となる貯蓄は、ひどい供給不足のままだ。
いわゆる国内純貯蓄率(償却調整後の企業・家計・政府の貯蓄合計)は、2016年半ば国民所得のわずか2.4%しかない。
2008-11年の前例のないマイナスの貯蓄からは改善したものの、20世紀の終わり30年の平均6.3%からするといまだ遠く及ばない。」

慢性的な貯蓄は、言うまでもなく、海外マネーへの依存を意味する。
ローチ氏は、ここが「トランポノミクスにとってのアキレスの踵」になると指摘している。

トランプ次期大統領の経済顧問らは、トランポノミクスで財政支出拡大・減税が行われても、景気浮揚で歳出が増えるため、さほど財政は悪化しないと主張している。
いずこも同じ、上げ潮派のロジックだ。
そして、経済顧問は、歳入増の73%を今後10年での貿易収支改善によるものと見積もっている。
ここにトランポノミクスの自己矛盾がある。

ローチ氏は、米国の国内純貯蓄率が2018-19年のどこかで再びマイナス圏に落ち込みかねないとの予想を紹介し、それが保護主義とあいまってもたらす論理的帰結を述べる。

「皮肉にも、迫りくる貯蓄減少の時代、米国はいっそう海外からの余剰貯蓄に依存することになる。
トランプ政権が、主な債権国つまり中国を(保護主義の)標的にすれば、その戦略はバック・ファイヤーを引き起こす。
少なくとも、米国が海外から借金する条件について悪い影響が及ぶだろう。
例えば、それは金利上昇かもしれず、その兆候はすでに見えつつある。
最終的にはドルの下落圧力になる。」

仮に保護主義が功を奏して経常収支が改善すれば、それは、海外からのネット投融資が減少することを意味する。
国内でも海外でもマネーが足りなくなれば、米経済は「繁栄の種子」を奪われてしまうのである。