スティグリッツ:新自由主義・トリクルダウンの誤り

ジョゼフ・スティグリッツ

ジョゼフ・スティグリッツ教授が、トランプ現象について分析している。
社会の格差を生んだ新自由主義的な政策の誤りを指摘し、トランプ氏の政策はまったくの誤りと批判した。

スティグリッツ教授はProject Syndicateへの寄稿で、ドナルド・トランプ候補がここまで米大統領選を維持できた背景を説明している。
背景には、米国民の生活が苦しくなった点があるといい

  • 正規雇用の男性従業員の所得のメジアンは42年前より低い
  • 所得分布の最下層にある実質賃金は60年前なみ

という現状を例に挙げた。
一方で、過去60年、米GDPは6倍近くにまで増加している。
政治家は、「全員に繁栄を約束」するが、その約束はまったく果たされていない。

こうした事実から見て、スティグリッツ教授はトランプ氏の主張が誤っていると指摘する。
トランプ氏は米国の抱える問題を貿易と移民問題に求めているが、そうではない。
問題の本質は、全体のパイが大きくなっても、それが国民一人一人に分配されない構造にあるのだ。
TPPなどの貿易交渉にしても、仮に実現不可能となれば、その原因は企業の利益を偏重したところにあると、教授は指摘している。

アメリカン・ドリームの国から夢は消え、リーマン危機では政府が金持ちの銀行家を救済した。
こうしたことへの不満がトランプ氏を大統領選に押し上げてしまったと、スティグリッツ教授は述べる。
そして、トランプ氏は事態をさらに悪化させようとしているという。
トランプ氏は減税を約束し、これまで逆効果しか示さなかったトリクルダウンを主張している。

こうした失敗から、米政治家は2つの教訓を肝に銘じるべきと、スティグリッツ教授は語る。
一つ目は格差拡大だ。

「過去40年の経済政策を形作ってきた単純な新自由主義的な市場至上主義はひどい誤りをもたらす。
格差拡大という犠牲のもとにGDPを増やす。
トリクルダウンの経済学は機能しない。
市場は真空の中に置かれているのではない。
サッチャー・レーガン『革命』は上層の利益のために市場のルールを書き替え、作り直した。
それは格差を拡大することに成功し、成長を高めるという使命には完全に失敗した。」

こうした観察から、二つ目の教訓が導かれる。

「米国は再び経済のルールを書き替える必要がある。
今回は、普通の市民に恩恵があるようにだ。」

スティグリッツ教授は、変化にともなうリスクを認めている。
しかし、変化しないリスクの方がはるかに大きいと主張する。
それは、社会の分断、民主主義の危機、経済の弱体化をもたらすからだ。