スキデルスキー:ヘリコプターが飛んでくる

ヘリコプター

ケインズ研究で有名な、経済学者で英上院議員のRobert Skidelsky氏が、近年の金融・財政政策を解説している。
伝統的な金融・財政政策に限界が明らかな今、ヘリコプター・マネーなど非伝統的政策が実施されてしまう可能性が大きくなっているという。

世界各国で財政政策が息を吹き返している。
各国財政が悪化する中で封印されていた財政政策だったが、代打を務めていた金融政策に限界が見えてくる中、再度の登場が望まれている。

スキデルスキー氏は量的緩和の3つの問題点を挙げる:

  • 長く続けると効果が逓減する
  • 銀行貸出に効果がなく、不良債権を増やし、成長・インフレに寄与しないとの研究がある
  • 格差拡大を助長する
  • 中央銀行が流動性を供給すると市中銀行は貸し出そうとせず超過準備を積み、流動性を吸収すると市中銀行は貸出によって信用創造してしまう

ちなみにスキデルスキー氏はマイナス金利についても「実りのない努力」と考えている。

結果、財政政策の出番となる。
ゼロ金利でインフラ投資をせよとの声は多い。
(参考; クルーグマン:安く借りてインフラに投資しろ
(参考; ローレンス・サマーズ:インフラ投資先延ばしは有害な隠れた借金
ところが、これにもリカードの等価定理が立ちはだかる。
財政政策が需要の先食いにすぎないとの「誤」認識が、財政政策の選択を遠ざけているとスキデルスキー氏は指摘する。
ケインジアンらしい考え方だ。

こうした考えから導き出される机上の空論がヘリコプター・マネーだ。
スキデルスキー氏は2つの使い道を挙げる:

  • 国民に給付金を配る
  • インフラ投資に使う

では、ヘリコプター・マネーは有効な手段なのだろうか。
むろん、もろ手を挙げて喜ぶような話ではない。

「もちろん(政府が)返さなくてもいい国債を発行できるのはすばらしいことだ。
本当かい?
政府が給付金やインフラのためのマネタリー・ファイナンスに容易に依存しきってしまう危険がある。
だからこそ、経済環境が相当に悪化しないかぎり、あからさまには試みられにくいのだ。」

べき論は別として、スキデルスキー氏は何もしないことの政治的リスクも認める。
経済環境が悪化すれば、何もやらないリスクが大きくなる。
何もせずに政権基盤を揺るがすより、選択すべきでない政策を選択してしまうのは古今東西に共通する現象だ。

「好むと好まざるとにかかわらず、非伝統的な財政政策が次の選択肢になる可能性は小さくない。」