サマーズ氏発言の捉え方

ローレンス・サマーズ

ローレンス・サマーズ元財務長官(現ハーバード大学教授)が、日銀とカナダの中央銀行が共同開催したセミナーに出席した。
サマーズ氏発言について、各社の報じ方が興味深い。

Reuters「日銀金融緩和の新たな枠組みを歓迎」

丁寧に報じたのがReuters
サマーズ氏は趨勢的停滞論を引きつつ「家計や企業の貯蓄率の上昇、人口の伸び鈍化、技術発展による効率化が自然利子率を低下させている」と指摘。
自然利子率が下がった分、経済を刺激するにはさらなる緩和強化が必要と主張する。
ここから導かれる結論は

  • 米国では、利上げすべきでない
  • 日本では、緩和強化に資する限り「新たな枠組みを歓迎」

となる。
母国にNo、他国にYesというあたりは、さすが政治家だ。

ただし、日銀が緩和の主たるエンジンにともくろむマイナス金利深掘りについては、「国民が利下げに対抗してタンス預金を始めかねず、マイナス金利をさらに深掘りする余地はあまりない可能性がある」とも語っている。
こうしたところをみても、サマーズ氏の「歓迎」の本気度はいかほどだろうか。

なお、一部から待望論のある日銀による外債購入については、可能性を除外こそしなかったが、慎重な考えを示した。
「現在の国際情勢からみて競争的な切り下げ政策にはかなりのリスクが伴うと考えている」と語った。

日経「日銀の新たな枠組み『2%への適切な一歩』」

日経QUICKが短く報じている。
速報メディアだから致し方ないが、深みはない。
サマーズ氏が日銀の新たな政策を称賛したと報じている。
特筆すべきは「解決には金融政策だけでなく、財政政策も使って需要を喚起する必要がある」と語った点。

日経電子版でも報じているが、そのトーンは多分にちょうちん的だ。

時事通信「『ヘリマネ』実質的に導入=日銀政策を評価」

時事通信の報道は短くポイントを絞った伝え方だ。
「『量的金融緩和策に取り組んでいる、すべての主要中銀が国債を買い入れ、財政支援をしている』と指摘し、実質的に日米欧など各国で導入済みとの認識を示した」と書いている。
重要なポイントなのに、残念なことに言葉遊びに終わっている。

興味深いのはちょうちん的な記事ではない。
権力への称賛は努力しなくても耳にすることができるが、問題点を見つめる意見は意図して耳を傾けなければならない。

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