ゴールドマン:非対称のリスク

Goldman-Sachs

米ゴールドマン・サックスが、トランプ次期大統領下の米経済についてシミュレーションを行っている。
可能性としてはリスク・シナリオの方が優勢とし、最悪のシナリオでは米経済がスタグフレーションに悩まされると警告した。

ゴールドマン・サックスの経済シミュレーションをBloombergが伝えている。
まず、トランプ次期大統領が公約した政策について、経済面でのプラス面・マイナス面が検討されている。

  • プラス: 減税、財政拡大(インフラ支出、防衛費)。
  • マイナス: 貿易・移民政策の厳格化によるスタグフレーション懸念。

「トランプの約束した税制改革・インフラ支出の財政政策としての効果は、短期的な経済成長をもたらし、内容によってはより長期的にサプライ・サイドへの好影響を及ぼしうる。
しかし、他の公約は貿易・移民について新たな規制を作るというものであり、経済成長、とりわけ長期的な経済成長に悪影響を及ぼすものだ。」

もっとも、選挙前から嘘つきとはやされてきた次期大統領が公約を守るかどうかは定かでない。
つまり、経済や市場は大きな不確実性の中に置かれている。
ゴールドマンはこの不確実性に対応するために3つのシナリオと中間シナリオを設定し、シナリオごとに何が起きるかを検討している。
このシミュレーションを計算するにあたって、ベース・ケースを設定、それから各シナリオがどれだけ改善・悪化するかを計算している。

全開シナリオ: 公約がすべて実行される
2017年後半のGDP成長率が0.2%程度改善する。
2.3%まで上昇したインフレに対処するためFRBが利上げし、2018・2019年の成長率は最大0.5%悪化する。
米インフレの昂進については、ゴールドマンは早いうちから警告してきた。

優しいシナリオ: 財政拡大だけが実行される
2017-2019年の成長率は0.5%改善。
インフレはわずかな上昇。
Bloombergは、ゴールドマンの株式ストラテジストによる株価シミュレーションも伝えている。
「(法人税の)実効税率が現行の26%から20%に引き下げられれば、1株利益見通しは8%押し上げられ125ドルになるという。
前年同期の比較では20%の伸び率となり、現在の見通しの倍だ。」

逆風シナリオ: 貿易・移民規制のみが実行され、FRBがタカ派的になる
2018-19年の成長率は0.8%低下。
2019年初めにインフレ2.3%、失業率5.3%に悪化。
インフレと不況が共存する状態、いわゆるスタグフレーションとなる。
当初はインフレ退治のためFRBが利上げを行うものの、2019年になると経済成長・雇用への配慮から利上げを行えなくなるという。
インフレが野放しになりかねないのだ。
最近ではグリーンスパン元FRB議長が同様の警告をしている。

妥協シナリオ: 控えめの財政拡大、移民・貿易政策の緩やかな強化
2017年後半の成長率が0.1%改善。
2018年以降0.1-0.2%程度悪化。

ハッピー・エンドは「優しいシナリオ」だけになっている。
しかし、このシナリオにしても、国の借金が増えるという欠点は否定できない。
こうしたことからゴールドマンは、シミュレーションの結果をこう評価している。

「我が社のベース・ケースの近傍にあるリスクは非対称(下方リスクの方が大きい)であるようだ。」