ケネス・ロゴフ:海外勢の忍耐をあてにしてはいけない

ケネス・ロゴフ

『国家は破綻する』の著書で世界各国の財政政策に大きな影響を与えたハーバード大学 Kenneth Rogoff教授が、米政府の調達の長期化について論じている。
米政府は安定的な財政運営のため、マチュリティを長期化すべきという。

いつでも金利は急騰しうる

ロゴフ教授の問題意識はProject Syndicateへの寄稿の冒頭に書かれている。

「米政府は、現在の超低金利を恩恵を確保するために、より長期の国債を発行すべきだろうか?
難しい判断だ。
しかし、全体の債務レベル(年金や医療保険の負担の積み立て不足が上昇を続けているのは言うまでもない)はすでに高く、おそらく決断の時がやってきた。」

すでに超長期に目がいっている日本からすると、わかりにくい話なので、経緯をおさらいしておこう。

  • 米財務省とFRBは協力して、民間セクターの金利低下のため長期国債を減らしてきた。
    (QEで長期国債を買い上げ、金利を押し下げてきた。)
  • 現在、米国債の平均残存期間は3年未満。
  • これまでは、経済刺激のための短期調達は有効だった。
  • しかし、政府が銀行のように短期で調達し長期投資するのはリスクが高い。
  • GDPの82%にあたる政府債務で金利上昇が起これば、利払い負担が急騰しかねない。

こうした混乱は目に見えて予想されているわけではない。
しかし、ロゴフ教授は、何かのきっかけでいつでも起こりうることと言う。

  • 戦争
  • 大災害
  • 中央銀行が有効なインフレ誘導策を発見
  • 国民がドナルド・トランプを大統領に選び、財政拡大の暴走が始まる

財政拡大に備え調達の正常化を

民主・共和いずれの候補が次期大統領になっても、米財政は拡大する方向に動くだろう。
ロゴフ教授は、有益な公共事業の存在を否定しているわけではない。
次期大統領に、事業の内容の精査を望んでいるのだ。
そして、借りると決断するのであれば、安く借りることが重要だ。

「世界の準備通貨を発行している米国は、まだ借りる余力がある。
しかし、賢く借りるよう仕組まなければいけない。」

ロゴフ教授は、経済が回復していない時期ならまだしも、正常化が進んだ今では、QEのような政策の必要性は薄くなっているという。
そして、それこそが米財務省が岐路に至ったことを指し示しているという。
現在、各国の超長期国債の最長の期間は

  • 米国: 30年
  • 日本: 40年(50年債検討の噂が流れたが否定された)
  • スペイン: 50年
  • アイルランド、ベルギー、メキシコ: 100年

確かに、米国はもう少し長い調達を考えてもいいかもしれない。

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