ケネス・ロゴフ:注文の多い料理法

ケネス・ロゴフ

国家は破綻する』の著書で世界各国の財政政策に大きな影響を与えたハーバード大学 Kenneth Rogoff教授が、次の不況に備えた政策の棚卸を急ぐよう提起している。
まだしばらく低金利の継続が見込まれる中、不況時に打つ手がなくなりかねないとの危機感を示したもの。

ロゴフ教授はProject Syndicateへの寄稿で、次のFRB利上げばかりに気を取られている風潮に警戒感を強めている。
今、本当に注意すべきは、次の不況期にどれだけ利下げ余地があるかだという。
ローレンス・サマーズ氏なども指摘しているように、次の不況期、金融政策にはほとんど緩和余地がない可能性が高い。
ロゴフ教授は、ゼロ金利制約を取り払うマイナス金利政策の可能性に言及しているが、同時に、日欧の例のとおり、有効性に疑問が呈されている点も指摘している。

そのため、日銀のイールド・カーブ・コントロールも俎上に上りうるという。

「このアプローチはしばらくは有効だろう。
しかし、最後には崩壊する重大なリスクも抱えている。
固定為替レートがしばらくは役立つものの、いつかカタストロフィーを迎えるようなものだ。」

ロゴフ教授は、日本と比べて長期金利が高位にある米国の状況を念頭に置いているようだ。
日本では当面長期金利を押し上げることが想定されているが、米国の場合はその逆となる可能性が高い。
バーナンキ元FRB議長が警告した通り、金利を押し下げる長期金利ターゲットは、際限のない国債買入れを強いるリスクがある。
際限のない買入れは、将来均衡金利が上昇に向かう時、FRBの財務を激しく悪化させかねない。

結局のところロゴフ教授は、マイナス金利政策の副作用を最小化し、有効性を高めるのが最善と判断している。
さらに代策として、物価目標を2%から4%に引き上げる方法も紹介している。
インフレを2%分多く許容すれば、(最終的には)名目金利も2%高くなり、利下げ余地が増えるのだという。
ただし、これにはいくつか重大な問題点も存在する:

  • 物価目標を引き上げても達成できなければ中央銀行が信認を失うだけ。
  • リーマン危機時がそうだったように、次の不況時には2%の利下げでは足りず、おそらく4-5%かそれ以上の利下げが必要になる。
  • 賃金や契約の改定が頻繁化し、金融政策の効果が薄れてしまう。
  • 相対価格や税制を歪める。

マイナス金利にも物価目標引き上げにも難点がある。
他に道はないのか。
ロゴフ教授は、2つの毛色の違った提案を紹介する。

  • アイケングリーン: 保護主義(関税)を逆手に取る。
  • サマーズやクルーグマン: 生産性向上のための構造改革は物価を下げてしまうので逆効果となる可能性も。

日本における継続的な消費増税なども、この類に入るものだろう。

一方で、国家破綻の権威であるロゴフ教授は、流行りの財政政策は勧めない。

「もちろん、財政政策は常に経済を刺激する。
しかし、金融政策の有効性が失われたのを補おうという場合、政府支出を通常より不安定にするのは極めて望ましくない。」

次の不況に間に合わすには手遅れかもしれないとしながら、ロゴフ教授は選択肢の棚卸を急ぐべきと説いている。
いずれの選択肢も問題を多く抱えているからだ。