クルーグマン:違う宇宙の国

ポール・クルーグマン

ポール・クルーグマン教授が、自身のブログで、ドイツの頑なな緊縮政策を批判した。
世界が財政政策の重要性を認識しつつある中、一番変わらなければいけない国が耳を傾けないと嘆いている。

クルーグマン教授の主張は一貫している。
金融も、財政も、拡張的にというものだ。

「エリート層は、遅いながらも、理解し始めている。
金融政策は、財政拡大の助けを強く必要としている。
このワン・ツーをヘリコプター・マネーに仕立てて人々が心地よいなら、それでいい。
しかし、財政と金融を組み合わせるのは大事だ。」

と、ヘリコプター・マネーを望むかのような書き方をしている。
しかし、このマッド・エコノミストには往年の宿敵がいる。
国内なら、米共和党。
海外なら、健全財政にこだわり続けるドイツだ。
教授がドイツを語る時、そのレトリックはいつにも増して品を失う。

「ドイツは、他国とは異なった知的ユニバースに存在している」

一方、欧州の置かれた状況はどうなのか。
クルーグマン教授は、欧州の問題点を「2.5個」挙げる:

  • ユーロ圏は全体として、少なくとも趨勢的停滞の初期の段階にある。
    インフレは、低すぎるECB目標の半分しかなく、これに対処するには財政刺激策が必要だ。
  • 欧州内での相対的な物価・賃金が適正でない。
    南欧ではさらに引き下げが必要だが、そうするよりは、ドイツが好景気になりインフレが高進する方が実現しやすい。
  • 銀行システムは公的資金注入が必要だ。

こうした欧州の状況に、ドイツの緊縮はどう作用するか。

  • ドイツの緊縮が欧州全体の需要を弱め、低金利にもかかわらず、他国にも緊縮を押し付けてしまう。
  • ドイツが好景気・高インフレになれば、それが南欧での高インフレにもなるが、ドイツが緊縮してしまうので、それも起こらない。
  • ドイツが銀行救済でベイル・インを求めており、問題が長期化しかねない。

クルーグマン教授は、ドイツの緊縮が欧州だけでなく世界に多重の影響を及ぼしているという。
結果、ドイツの経済規模を超える影響が及ぶと懸念している。
教授は、世界が(財政政策の必要性を認識するよう)変わりつつある中、一番変わらなければならない国が耳を傾けないと非難している。

EUとドイツの問題は、クルーグマン教授のようなアプローチでは解決できないだろう。
ドイツに言うことを聞けと言うだけで解決するなら、Brexitにはなっていない。
ドイツに要求をすると同時に、EUの制度変更や解体を働きかねるのでなければ、盟主ドイツが動くわけもない。

ジョゼフ・スティグリッツ教授は最近の著書の中で、EU内不均衡の解決策として「フレキシブル・ユーロ」の導入を提案している。