クルーグマン:アベノミクスの教訓は金融政策の限界

ポール・クルーグマン

ポール・クルーグマン教授が、「アベノミクスの真の教訓は金融政策の限界だ」と分析している。
「第3の矢(構造改革)など気にせず、第2の矢(財政政策)に取り組め」という。

リフレ政策の理論的支柱とされたクルーグマン教授が、自身のブログでアベノミクスの正体を振り返っている。
3本の矢で構成されるはずだった経済政策は、「実際は金融政策の矢だけが放たれた」にすぎない。
さらに、教授からすれば、昨今の構造改革や成長戦略が大切という議論は、必要な財政政策を行わないための陽動作戦である。

クルーグマン教授はIMFによる日本のプライマリー・バランス(循環調整後)推定値の推移を示し、アベノミクスの財政政策を振り返る。

「全体で見て、日本の財政政策はアベノミクス開始後、拡張的にではなく、実質的に緊縮になっている。
主な理由は消費増税であり、他の施策はこの影響を打ち消すことができなかった。」

教授は、アベノミクスが金融政策に依存したため、円安・株高を生み出すことはできたが、力強い好景気やインフレを生むには至らなかったと総括している。
確かに、クルーグマン教授はリフレ政策の提唱者だ。
しかし、同時に流動性の罠についても早くから指摘していた。
流動性の罠に陥ってしまえば、金融政策は効力を失う。
その金融政策にアベノミクスは依存してしまった。
政府は中央銀行に押し付けるだけでいい金融政策だけにもたれかかり、政府自体が責任を負う財政政策にはあまり手をつけて来なかった。

先月発表された政府の経済対策も、総額28兆円とアピールされたが、真水は6兆円あまりにすぎない。
日本は借金まみれの国だから、緊縮が絶対に悪いとはいえない。
名を捨て実を取ったことを喜んでいる緊縮派もいるのだろう。
しかし、あらゆるところで真実とそれからかけ離れたレトリックが併存するのには閉口する。

政府も日銀もフォワード・ミスガイダンスの国。
ほどほどにしないと、政治家・官僚の言うことを誰も信じない国になってしまわないか心配だ。