カーメン・ラインハート:ドル不足が中国を浮き上がらせる

カーメン・ラインハート

著書「国家は破綻する」で有名なハーバード大学Carmen M.Reinhart教授がドル不足の歴史を振り返っている。
ドル不足の解消のためにはドル保有者の関与が必要とし、中国がIMFで指導的立場を得る可能性を指摘している。

ラインハート教授はProject Syndicateへの寄稿で、戦後と現在のドル不足について比較している。

長い戦火で疲弊しきった欧州は戦後、復興に必要な資本財を米国からの輸入に頼らざるをえなかった。
そのためには米ドルか金が必要だったが、輸出での米ドル獲得はおぼつかないため、ドル不足が発生した。
そこで主に欧州内からの輸入を減らすことで貿易収支を改善しようとしたが、多くの国が同様の政策を用いたため効果は減殺されてしまった。
ドル不足は継続し、いたるところに資本規制が課され、結果、米ドルのブラック・マーケットが繁栄したのだという。

ラインハート教授は、為替や資本制度がはるかに自由になった今、ドル不足が再び発生していると指摘する。
今回の原因はコモディティ安であり、資源国でもある途上国で顕著だという。

「実際、多くの途上国で過去2年ほどで最も盛況な市場は為替のブラック・マーケットだ。
主にドルの並行為替市場が戻ってきた。」

為替相場の自由度が高い国では通貨の下落、低い国では通貨切り下げが進んだが、輸出は思うほどには増えなかったという。
資源価格が低迷する一方、資源関連セクターの債務に米ドル建てのものがあったためだ。
これでは入りが増えず、払いばかりがかさんでしまう。
ラインハート教授は、エジプトやベネズエラなど多くの途上国で、ドル不足が食料不足に発展している点を心配している、
言うまでもなく、こうした現象は産油国の政情を不安定化する。

ラインハート教授は、今回のドル不足が列強のパワー・バランスを変化させる可能性に言及している。

「マーシャル・プランは、その寛大な資金提供を通じて戦後の欧州のドル不足を和らげるためのものだった。
これまでのところ現在これに代わるものはない。
現状で最も有望なのは1980年代のようなアプローチであり、IMFプログラムを望む新興国・途上国が増えている。
これはおそらく、トップの空きを埋める機会を中国に与えることになろう。」

外貨準備高トップの中国は、2位の日本を大きく突き放している。
IMFのSDRに人民元が採用され、IMF内での発言力も増していくだろう。
一方の日本は、ベーシス・スワップという名のドル不足に苦しみ、日銀がドル資金供給で邦銀を支援し続けている。

あるいは、ジム・ロジャーズ氏が再三口にする米ドル・バブルにも似たような響きがある。
米ドルにまつわるこうした現象が同根であるとすれば、ロジャーズ氏の話にも耳を傾けた方がいいのだろうか。
ロジャーズ氏は、米ドルがバブルになり、崩壊し、その次に金のような資産クラスへの殺到が起こると予想している。