【First Read】日銀「総括的な検証」

日本銀行

日銀が本日、「総括的な検証」の結果を発表した。
日銀は現実的な道を歩み出したように見えるが、至る所に待ち構える落とし穴はなおも深い。(浜町SCI)

同検証については、8月1日付コラムで予想をしてあった。
「いろんな意味での期待を込めて」、インフレ目標の柔軟化とイールドカーブのスティープ化を予想したが、レトリックは違えど、ほぼその予想どおりの結果となった。
これは筆者からすれば、大きな驚きだ。
筆者は、多くの組織と同じく、日銀も自らの問題点と向き合えないであろうと予想していた。
取り繕えないほど追い詰められた日銀が、最大限のレトリックで面目を守りつつ、現実路線に少し方向を変えたということだろう。
何が決まったのか、建前と本音を読んでおこう。

1)長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)

金利を長短両方から操作する。

  • 短期金利: 超過準備のマイナス金利 ▲0.1%
  • 長期金利: 10年物国債金利を概ね現状程度(ゼロ%程度)にするよう長期国債を買入れ
    買入れ額は概ね現状程度(保有残高の増加額年間約80兆円)をめど
    平均残存期間の定めは廃止

新しいのは、長期金利を目標に向けて操作する長期金利ターゲティングの導入だ。
1月のマイナス金利導入後、イールド・カーブが一層フラット化したとの反省から、事実上スティープ化のために新型オペが導入されることとなった。

長期金利ターゲティングがテイパリングを可能にする

長期金利ターゲティングがもたらすのは、イールド・カーブのスティープ化だけではない。
これは、長期国債買入れ額の節約にもなる。
日銀は、今後の金利引き下げをマイナス金利を起点として行うことになろう。
その際に再び長期金利に低下圧力がかかるようなら、長期国債買入れペースを緩めることができる。
これは、買い入れる玉がなくなるという意味での《限界》を遠ざける効用がある。
マイナス金利深掘りによる事実上のテイパリングである。

この10年もの0%が、超長期ゾーンでのプラス利回りを安定的にもたらすなら、年金・保険は一息つくことができる。
それでも低利ではあるが、さらなる金融緩和局面での不安は大幅に減る。
一方、市中銀行の悪夢は続く。
市中銀行の運用サイドのマチュリティ―は年金・保険よりはるかに短く、マイナス利回り圏に浸かっている。
市中銀行がマイナス金利から恩恵を得るしくみを提示しないと、深刻な金融不安をもたらす可能性がある。

2)資産買入れ方針

据え置き。

3)オーバーシュート型コミットメント

2%の物価目標を安定的に持続できるまで「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。
マネタリーベースの残高は、それまで拡大方針を継続する。
目標達成までやり続けることを「オーバーシュート型コミットメント」と呼んでいるようだ。
愛国者からすると、なんとも醜い言葉ではある。

「この方針により、あと1年強で、マネタリーベースの対名目GDP比率は100%(約500兆円)を超える見込みである(現在、日本は約80%、米国・ユーロエリアは約20%)。」

見ておくべきは、マネタリー・ベース対GDP比率。
日銀はすいぶん遠くまで来てしまったようだ。

オーバーシュート型コミットメントが意味することは、次の2つだろう。

  • 早期に2%を実現するという約束は不可能と認める。
    市場・経済の期待に働きかけるためには実現味のある目標が必要であるため、事実上オープン・エンドの目標に移行。
    喚起する期待としては、かなり穏やかなものとなった。
  • マネタリー・ベースは重要としながらも、数値目標としては後退させる内容。

(次ページ: 実は様変わりする日銀の政策)