【輪郭】長期金利ターゲット「ゼロ%」の根拠

日本銀行

日銀が9月に「総括的な検証」で長期金利ターゲットを導入した時、なぜ長期金利の誘導目標が「概ね現状(当時)程度(ゼロ%程度)」なのか首を捻る向きが少なくなかった。
その根拠ともいえるペーパーが14日、日銀から公表された。(浜町SCI)

注目される自然利子率、均衡金利、中立金利

日銀レビュー – わが国における自然利子率の動向 – 『総括的検証』補足ペーパーシリーズ2」と題されたペーパーでは、さまざまな方法で自然利子率を計算している。
まずは、最近かつてなく注目を浴びている自然利子率(=均衡実質金利、中立実質金利)について復習しておこう。

「自然利子率とは、経済・物価に対して引き締め的にも緩和的にも作用しない中立的な実質金利の水準のことである。
・・・
金融緩和の基本メカニズムは、伝統的金融政策、非伝統的金融政策にかかわらず、実質金利を自然利子率よりも低位にすることである。」

つまり、金融緩和とは、(政策金利や量的緩和を通して)自然利子率より市場の実質金利を低くすることである。
仮に、政策金利や市場の実質金利が不変であっても、自然利子率が低下すれば金融環境は引き締め的になり、自然利子率が上昇すれば金融環境は緩和的になる。
最近、米国では、自然利子率の低下を理由に、金融緩和が不足しているとの議論が盛んだ。

日本の自然利子率はゼロ%程度

さて、今回、日銀は自然利子率をさまざまな方法で推計している。
結論から言えば

「1990年代以降、潜在成長率の動向を反映して、趨勢的に下落傾向にあること、また推計の方法により相当の幅を持ってみる必要はあるものの、最近では、概ね0%程度で推移している可能性が高いことが示された」

とされている。
もう少し詳細に見ると

  • 潜在成長率(長期的近似値): 0%
    「1990年代以降趨勢的に低下しており、直近では0%台前半で推移」
  • 実質短期金利のトレンドを抽出する方法: ▲1%
    「2010年頃は1%を上回っていたが、その後急激に低下し、直近では▲1%程度まで低下」
  • LaubachとWilliamsの方法: 0%
    「1990年代に下落傾向を辿りはじめ、1990年代末の金融危機や2008年の世界的な金融危機の局面ではマイナスの値となったものの、2010年前後からは概ね0%程度で推移」
  • 均衡イールドカーブを用いた方法: 小幅のマイナス
    「趨勢的に低下傾向にあり、2010年頃からは概ね0%近傍 ないし小幅のマイナスで推移」

この中で注目したいのは最後の「均衡イールドカーブを用いた方法」だ。

(次ページ: 自然利子率が教える進むべき道)