【輪郭】金融政策決定会合の意見に見る日銀の変容

日本銀行券

7月28・29日の日銀金融政策決定会合での「主な意見」が公表された。
そこには、かつての日銀とは違う世界の会話が書かれていた。(浜町SCI)

あからさまな株価吊り上げ

まず目を引いたのは、ETF買入れ増額についての意見。

「海外発の不確実性が企業や家計のコンフィデンスに影響しているため、ETF買入れを年間6兆円に倍増するといった資産価格に働きかける緩和策が有効である。」

筆者が違和感を感じたのは、「資産価格に働きかける緩和策」という言葉。
確かに経済には資産効果という現象があるのだが、ここまであからさまに株価押し上げを主張するとはどうしたことか。
筆者の理解では、日銀がリスク資産を買い入れるのは、市場のリスク・プレミアムが上昇し、行き過ぎた価格下落が経済を不安定化させるような場合であった。
今回はそうした事由に当たるのだろうか。

平時なのに市場介入

日経平均と同VIXを見てみよう。

日経平均株価と日経平均VIX

株価は高いとは言えないが、低いとも言えない。
ボラティリティも低いとは言えないが、突出するような状況ではない。
もう少し近時に絞って見てみる。

日経平均株価と日経平均VIX.直近

ここで読み取れるのは、めでたくボラティリティは低下したということ。
肝心の日経平均の方があまり上げていないが、これは市場が金融政策決定会合を先回りした影響が大きいだろう。
今回の追加緩和は、市場の先回りが顕著だった。
市場がさっさと追加緩和を織り込んでしまったから、多少の追加緩和では株高とはなりにくかった。
逆に言えば、市場をがっかりさせれば厳しい下落に見舞われたかもしれない。

日銀は市場の言いなりに

そうだとしても、あからさまに「資産価格に働きかける緩和策」を唱えるのはいかがだろう。
こう言ってしまうと、ETFの購入はもはや緩和策ではなくなる。
株価吊り上げと言うべきだ。

今回のETF買入れ増額は、金融政策決定会合の存在意義を揺るがす事象であるかもしれない。
市場がさっさと株高を織り込んでしまうと、日銀はETFを買い入れざるをえなくなるのか。
もしもそうなら、緩和・引き締めの判断は日銀ではなく市場の側に移ったことになる。
金融政策とはそういうものではないはずだ。
投資家らに損をさせても、実体経済のためにやるべきことがあるはずだ。

先回りして売り逃げろ

投資家は気を付けなければいけない。
目下の投資戦略は日銀や年金の先回りをすることでいい。
後にこうした公的機関が値を吊り上げてくれ、高値で買い取ってくれる。
ところが、一たび流れが変わると、そうしたリスク資産はシーリングを抱えてしまう。
経済環境や企業収益が改善しても、大きな売り手がいるためにアップサイドがなくなってしまう。
投資家は、こうしたリスク資産を買ったら、日銀や年金が買っているうちに速やかに売り逃げるべきだ。

(9月の「総括的な検証」のゆくえ)