「総括的な検証」は総括的に行われるか?

日本銀行券

今月20-21日の日銀金融政策決定会合で予定されている「総括的な検証」について、黒田総裁がその目的を講演で語った。
その内容から、日銀が既定路線を継続する危うさが見て取れる。

予想通りの強気発言

大方の予想どおり、黒田総裁は既定路線を継続することを前提とした検証を意図していることが明らかになった。
「あくまで2%の早期実現のために行う検証」とし、緩和の縮小の議論ではないと強調されている。
黒田総裁は検証の大きな柱を2つ挙げる:

  • 大規模な金融緩和を行っても2%インフレ目標が達成できていない。
    政策のメカニズムの中核にある「予想物価上昇率」が政策効果によってどのように押し上げられ、また阻害要因によってどのような影響を受けたかを検証。
  • 「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」は国債・貸出・社債などの金利を押し下げた。
    市場の流動性や金融機関の収益も含め、この政策の効果と影響について検証。

門間一夫氏はこの展開を的中

黒田総裁の講演の当日発売された週刊ダイヤモンドには、この内容を予想するかのような記事があった。
元日銀理事で調査局長経験者の2人、早川英男氏と門間一夫氏のインタビュー記事である。
門間氏は、注目するポイントを2点挙げていた:

「金利は低ければ低いほど、常に経済に対してプラスに効くと経済学の教科書には書いてある。
ただ、日本は金利が20年間ほぼゼロに近い。
これだけ長期にわたって、低金利が続くことの効果をどう考えるか。
本当に教科書通りに効果が出てくるかどうか、金利の効果をしっかりと検証すべき」

「これだけ日銀が強力な金融緩和をしているのだから、これで人々の予想物価上昇率が上がるはず、というのが基本的な発想。
それが本当に効いているのかどうかも検証の対象とすべき」

さすがインサイダーだ。
的確に黒田総裁の意図を察し、予想を的中させている。

インフレ期待はすでに過去のもの

ここで注目したいのは、ポイントの順序が黒田総裁と異なっている点だ。
なぜ、逆転しているのか。
それには、現状に対する捉え方の違いがあろう。
黒田総裁は、いい面・悪い面があっても金融政策がうまくいっていると信じているから、自然な順序(時系列)で語った。
一方、門間氏は、金融政策の問題・課題が大きいと見るから、重大な点を先に語ったのだろう。

黒田日銀がインフレ期待を醸成できなかったことはすでに事実であり、それを検証したからといって問題を解決できる可能性はほとんどない。
黒田総裁自身が「国債の引き受けや財政ファイナンス」を「法律的にできない」あるいは「やるべきではない」と語っている。
つまり、ヘリコプター・マネーにもNoを出している。
過去できなかったインフレ期待醸成をもたらしてくれるようなツールがそうそう残っているとも思えない。

(次ページ: ゼロ金利に20年で検証すべきこと)