金融と財政の不可分な関係

いわゆるシムズ理論に代表される金融政策と財政政策の協調だが、特段目新しいものではない。
ここでは、東京大学の渡辺努教授が2005年に日経新聞で8回にわたり連載したコラムを紹介しよう。

シムズ教授の主張は物価水準の財政理論(FTPL)に基づき、インフレを誘導、債務問題を解決しようというもの。
ある理論モデルの一面をクローズ・アップし、個別の問題に応用したものであり、全体像との関係が素人にはやや見えにくい。
渡辺教授のコラムは、より広い経済学の視野から俯瞰する内容になっている。
これを読むと、日本が今世紀に入ってすぐ量的緩和に取り組んでいた頃すでに、こうしたテーマが明示的に議論されていたことがわかる。

それほど長い文章ではないので自身で読まれることをお勧めするが、ここでは興味を惹かれる部分をいくつか紹介する。

「金融政策ルールと財政政策ルールの扱いが異なる背景に双方のルールは独立という考えがある。
しかしこれは正しくない。
第1に、経済学のモデルを用いて望ましい金融政策ルールを分析する場合、得られる結果は財政政策についてどのようなルールを想定するかに依存する。
例えば金融政策ルールとしてインフレ目標が望ましいとの結論が得られるのは規律の高い財政ルールを想定した場合に限られる。」

この最後の文をどう読むべきか、なかなか興味深いところだ。

「中央銀行と政府は密接な関係にあり、中央銀行の発行する貨幣はシフトの連結バランスシート(貸借対照表)の負債項目に入れられる。その点では国債と同じだ。」

最近はやりの統合政府の考え方とかFTPLの政府債務評価方程式の取り扱い方と共通する考えだ。

「貨幣価値が低下し物価が上昇すると、一般の国債の実質価値は低下し、額面通り償還しても政府の実質の負担が減る。
これはデフォルトではないが、実質的にはそれと同じことになって、予算制約式は満たされる。
このため、貨幣価値の下落は『部分的デフォルト』とよばれている。」

日本の財政がどんなに悪化しても、日本がデフォルトする可能性は極めて低いと考えられている。
日本の債務はほぼすべて自国通貨建てであり、なんとなれば日本円の発行によって債務返済が可能だからだ。
一方で、このやり方が(遅かれ早かれ)インフレと通貨安をもたらすことは明らかだ。

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