野口悠紀雄氏:マネタイゼーションが50%インフレを生む

早稲田大学ファイナンス総合研究所・顧問 野口悠紀雄氏が、面白いアナロジーを紹介している。
日銀が当座預金残高を日銀券に振り返れば、50%のインフレとその後の連鎖反応に悩まされると試算されている。

ミシシッピ会社と日銀のアナロジー

野口氏は、週刊ダイヤモンドへの寄稿で、悪名高きジョン・ローが企てたミシシッピ会社を巻き込んだ資産スワップのスキームを紹介し、それと似たようなことをしている国があると指摘している。
債務にあえぐフランス王室とジョン・ローは、フランス国債をミシシッピ会社の株式と交換する資産スワップを画策する。
投機ブームに沸く中、ローがミシシッピ会社の株価を吊り上げたため、国債保有者は国債を手放し、かわりにミシシッピ会社の株式を受け入れた。
1720年には、フランス国債のすべてをミシシッピ会社が保有することとなった。
ミシシッピ会社は王室とローが支配する会社だったから、王室は事実上債務から解放されたのだ。
そのすぐ後、バブルは弾け、投資家が受け取った株式は紙屑同然となる。

野口氏は

  • このフランス国債とミシシッピ会社株式の交換
  • 現在の日本国債と日銀の債務たる通貨との交換

とダブらせている。
日本が事実上手をつけているマネタイゼーションである。
日本政府は(意図してか、意図しないでか定かではないが)国債を《連結子会社》である日銀の債務《円》と交換しているのだ。
その結果、日銀保有分の国債に払われる金利は日銀に渡り、それが国庫納付金として政府に戻る。
通貨には利払いがないから、政府・日銀合計で見た統合政府で言えば、実質的に債務が減ったことになる。
まさに、フランス王室とミシシッピ会社の関係だ。

日本の資産スワップは未完成

実質的に借金が減ってよかったではないかと思うかもしれない。
しかし、借金が減ったのはフランス王室であって、ミシシッピ会社の株式を掴まされた投資家ではない。
投資家は、だまされて王室に対する証文を紙屑と交換させられてしまったのだ。
野口氏は、ミシシッピ会社の失敗が「フランス革命の遠因になった」と不吉なことを書いている。

日本の場合、マネタイゼーションは完全には終了していない。
国債が姿を買えたのは日銀当座預金残高であって、実物の日銀券ではない。
よく量的緩和のことを《お札を刷る》と表現する人がいるが、それは正しくない。
現行の量的緩和では必ずしもお金を刷る必要はない。

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