藤巻健史議員:大統領の量的緩和批判で財政破綻の危機

藤巻健史

先日までトランプ大統領の海外移転阻止を賛美していた藤巻健史参院議員が、今度は大統領の円安牽制発言で将来見通しの変更を迫られている。
同議員は議員になるはるか前から日本財政の破綻・ハイパーインフレ・大幅円安を予想し、「オオカミおじいさん」と呼ばれている。

藤巻議員の週刊朝日への寄稿によれば、従前のシナリオはこうだった:

  • 日米金利差拡大で円安
  • 輸入物価上昇で2%物価目標を達成
  • 日銀は量的緩和終了を模索するが、金利上昇による財政悪化を恐れる政府が継続を要望
  • 量的緩和が継続、物価上昇が放置され、ハイパーインフレに

ところが、トランプ大統領の円安誘導批判によって、一番初めに起こるはずの円安が揺らいでいる。
そこで、藤巻議員のシナリオはこう変わった:

  • トランプ大統領が異次元緩和による円安誘導をやめろと主張
  • 政府は量的緩和の真の目的を財政の支援と認め、米国の了解を取ろうとする
  • 「トランプ氏を説得できないと、円の大暴落もありうる」

あらゆる市場関係者には共通の特徴がある。
たとえば

  • 日系証券の人たちは、何が起こっても円安・株高に結びつけたがる。
  • 債券や貸出業務に携わる人たちは、とかく弱気シナリオを持ってしまう。
  • いわゆる「終末博士」たちは、何が起こってもハルマゲドンがやってくる予兆と結びつける。

円高にしろとのプレッシャーを受けたら「円の大暴落」になるという藤巻議員のロジックは堅牢とは言えまい。
この点について、藤巻議員は周到にこう書いている:

「米大統領といえども口先介入だけで通貨を動かせない。
金利を動かせば、為替も動く。」

藤巻議員は今回「日米金利差の拡大」を為替変動のドライバーとして挙げているから、それにそって検証してみよう。
注目すべきはクリントン政権(1993年1月-2001年1月)でのドル円の動きだ。

日米2年もの金利差とドル円

クリントン政権の初期2年間財務長官を務めたロイド・ベンツェン氏は円高ドル安政策を進めた。
当時の日米金利差(ドル金利-円金利)は拡大していたが、ドル円相場は円高ドル安が進み、為替介入も効かなかった。
つまり、金利差とは確実に為替相場を決める要因とは言えないのだ。

ただし、筆者は円大暴落の可能性をゼロと言うつもりはない。
日本の財政が極めて厳しい状況にあることは事実であり、リスク・シナリオとしての円安は常に起こりうる。
藤巻議員が言うように、「円は今や『危険通貨』」との見方にも異存はない。
それどころか、はるか昔から危険通貨との見方にも同意する。

しかし、確率から言えば、やはりリスク・シナリオにすぎない。
円高にしろとの外圧がかかった結果、逆に暴落するという確率は高くない。
むしろ、《金利差はそこそこ拡大するのに、ドル円は円高ドル安に振れる》可能性の方が高いだろう。
過去の経験を見返せば、円とは理屈では測りがたいしぶとさをもった通貨のようだ。
だから、トランプ大統領からのプレッシャーで考えるべき主たるリスクは、素直に円高リスクであるのだと思う。

まだまだ議員は「オオカミおじいさん」を続けることになりそうだ。