藤巻健史氏:▲10%ならマイナス金利は効く

藤巻健史
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かつてJP Morganで伝説のディーラーと呼ばれた藤巻健史参院議員が、評判の悪いマイナス金利政策を擁護している。
同政策を伝統的金融政策の延長と捉え、中央銀行は非伝統的金融政策をとる必要はないと主張している。

藤巻氏はInternational Economyへの寄稿で「中央銀行は伝統的金融政策に固執すべき」と書いている。
伝統的な短期金利操作による金融調節に注力すべきであり、ゼロ金利に達した後は、量的緩和ではなく、マイナス金利を進めるべきであったというもの。
現在の超過準備への付利-0.1%はあまりにも小幅すぎ、マイナス金利の効果を発揮するにはより大きなマイナス幅が必要と説いている。

量的緩和が採用される前、量的緩和よりマイナス金利を推す人も何人かいて、藤巻氏はその中でもかなり早いうちからマイナス金利を唱えていた。
しかし、日銀は量的緩和を採用し、バランスシートを拡大するという、帰り道があるかどうかわからない旅に出た。
円安のおかげで経済はまずまず回復したものの、資産買入れのやめ時も見えず、将来バランスシートを縮小できるのかもわからない。

そうこうするうちに、縮小しなくてもいいという話まで出る。
縮小しなければいけないのか、しなくていいのか、どちらが正しいのかは神様だってわからない。
ただ、実験したのがマイナス金利の方だったら、こうしたリスクを半永久的に抱えることにはならなかった。
もはや後の祭りだ。

藤巻氏はマイナス金利を擁護するために2点、デメリットを打ち消すための議論をしている。
少々批判的に見てみよう。

イールドカーブのフラット化

藤巻氏は、もしも量的緩和ではなくマイナス金利を採用していたら、イールド・カーブはこれほどフラットにならず、金融機関への悪影響も小さかっただろうという。
マイナス金利が短期金利を操作しようというものであり、量的緩和がそれより長い債券を買い入れてきたことを考えると、藤巻氏の《量的緩和主犯説》は正しい。
ただし、そのロジックがいかさない。

「日本では、メガバンクのローンのわずか10%のみが固定金利ローンだ。
残りは変動金利ローンか、1年未満に期限が来るローンだ。
これは、長期金利を押し下げても、経済回復へのインパクトは極めて限られているということを示している。」

銀行のALMで資産・負債共に短期デュレーションが多いのは事実なのだが、指摘の対象を銀行とすることに危うさがある。
そもそも、銀行が苦しんでいる主因は、藤巻氏が言うようにイールドカーブの傾きとは言えない。
預金金利を簡単にはマイナスにできない中、短期金利を下げられてしまうと貸出金利に影響が及び、利ザヤが小さくなるのが問題なのだ。
利ザヤが極めて小さくなった時、銀行は貸出のリスクを取ることを不合理と考えるようになるだろう。

長期金利押し下げの悪影響はむしろ年金・保険など長期の運用を行う金融機関で顕著だろう。
こうした金融機関にはもちろん大きな社会的意義があり、そこから投資される長期安定的なマネーが経済・社会を支えている。
そこへの言及がないのが残念だ。

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