白井さゆり:インフレが消費を鈍らせる

2011年から昨年3月まで日銀審議委員を務めた白井さゆり慶應義塾大学教授が、米CNBCで日本の経済・金融政策について語った。
ウェブサイト上では長目の記事となっており、教授の具体性あるユニークな発言に興味を持った様子が伺われる。

「家計は物価、全体的な物価や特に食料品の価格に敏感だ。
だから、前四半期の消費支出の伸びはとても鈍かった。
食料品価格が上昇したからだ。
食料品価格が上昇すると、消費者は可処分所得が減ったと感じる。
結果、消費をむしろ減らしてしまうのだ。」

インフレ至上主義の米社会に白井教授は正面から斬り込んだ。
日本の家計に(おそらく企業にも)特徴的なマインドセットを米金融チャンネルで果敢に説明した。
インフレが消費・投資を増やすというのが欧米(と日本のリフレ派)の基本的な考えだ。
白井教授の解説は、家計部門について真逆のことに聞こえるはずだ。

こうした見方からすれば、円安を伝達経路とする金融政策は適当でないことになる。
円安は輸入物価を押し上げ、家計を苦しめ、消費を減らしてしまうからだ。
白井教授は「金融緩和だけでは総需要は増やせない」と指摘、財政政策の必要性を説く。
家計の消費については、デフレ・マインドを払拭するために、安心をもたらす社会保障制度の呈示が必要だという。

「家計は将来のことを心配している。
あと何年生きるかわからない中で、年金が十分と考えていないからだ。
安倍政権が本当にすべきは社会保障の拡充であり、年金・健康保険の制度を持続可能にすることだ。
それこそ家計を覆う不安・心配を取り除く方法だ。」

理にかなった提言だが、新自由主義的イデオロギーを掲げる現政権での実現性はいかほどだろう。
何しろ日本にはお金がない。
インフレを使わず支出を増やすとなれば、所得再分配の強化が必要になる。

白井教授は従前どおり量的緩和の持続可能性を維持するために国債買入れ額のテイパリングを行うべきと主張する。
さらに、長期金利ターゲットに幅を持たせるよう語っている。

「日銀は80兆円の買入れを減らすことが重要だ。
同時に、10年金利の目標を現在のゼロから0.0-0.5%に引き上げるとよい。
そうすれば、市場にもう少し金利を決めさせることができる。」