白井さゆり教授:QQEが企業・政府を甘やかす

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2011年から昨年3月まで日銀審議委員を務めた白井さゆり慶應義塾大学教授が、日銀の金融政策の枠組み見直しを提言した。
現実的な物価見通しに基づき必要な資産買入れ額を設定し、市場との対話をさらに改善するよう説いている。

「(イールドカーブ・コントロール(YCC)は)金融緩和策ではなく、金融システム安定化策。
日銀の論理はマイナス金利導入で崩れた。
現在の緩和策は目的も不明確になっている。」

白井教授はReutersのインタビューで、現状の日銀金融政策についてこう語った。
昨年9月の「総括的な検証」で、日銀はマネタリー・ベース目標を事実上後退させ、金融調節の手段を量から金利へと戻した。
短期側は日銀当座預金の一部へのマイナス金利適用、長期側は10年債利回りのペッグで操作し、イールド・カーブを日銀の理想とする水準に維持しようとしている。
それまで過度に低下し過度にフラット化したイールド・カーブを修正しようというものだ。

YCCは金融緩和ではない?

そもそも水面下かつ平坦なイールド・カーブが問題だったのは、それが金融機関の経営を過度に圧迫すると懸念されたためだ。
白井教授がYCCを「金融システム安定化策」と称したのはこうした理由だろう。
ただ、金融緩和ではないとする指摘は少々厳しい。
いくら強力な金融政策を実施しても、その政策を実体経済に伝播させる金融システムの機能を阻害するのでは政策効果は発揮されない。
その壁を取り払うのがYCCとすれば、それは金融緩和の重要な一部とも言えなくもない。

それでも、金融緩和ではないと言われる理由は、YCCの金利水準にもあろう。
日本の潜在成長率がゼロ近傍、物価上昇率も振るわない中、名目均衡金利は相当に低い(おそらく0-1%程度)ことが推測される。
それに対して、短期-0.1%、長期ゼロ%のイールド・カーブが金融緩和として十分な効果を及ぼしうるかどうかは議論があろう。
要は、日本は実質的なゼロ金利制約につかまっているのだ。

(次ページ: 海外で金利上昇が始まった)