白井さゆり教授:長期金利ターゲット引上げを

2011年から今年3月まで日銀審議委員を務めた白井さゆり慶應義塾大学教授が、来年前半の長期金利ターゲット引上げを提言した。
背景には非伝統的金融政策の副作用増大と最近の円安ドル高があるようだ。

長期金利ターゲットを0.5-1.0%に

白井教授はReutersのパネルディスカッションで、

「来年前半に消費者物価指数が前年比でプラスに転じれば、日銀は現在ゼロ%程度としている長期金利目標を0.5%から1%に引き上げるべきだと主張した」

のだという。
短い記事なので真意を汲むのは難しいが、教授の考えの変遷から主張の趣旨を読み解いてみよう。

以前はマイナス金利とのセットという話だった

日銀審議委員だった1月、マイナス金利導入に反対票を投じた白井教授は、その後、マイナス金利深掘りと同時にテイパリングを実施すべきと主張していた。
マイナス金利政策がイールド・カーブを一層押し下げ平坦化し、金融システムの機能不全を引き起こしかねない状態にあったからだ。
テイパリングはイールド・カーブをスティープ化するとともに、国債買入れの持続可能性を改善してくれる。
9月には、実施時期は2017年初めとの予想を語っていた。
理由として、国債買入れの限界が訪れること、原油価格低下の影響が剥落することを挙げていたが、もちろん米大統領選にともなう不透明性もあったろう。

金融引き締めになっても対処せざるをえない

その白井教授が、現在ゼロ%程度とされている長期金利ターゲットを引き上げろとの主張だ。
ターゲット引上げの手段はテイパリングであろうが、マイナス金利深掘りとのセットという話はトーン・ダウンしているようだ。
引き締め側にシフトしたように見えるが、この背景は何だろう。
教授はゼロ%の長期金利についてこう語ったという:

  • 「経済的に合理的ではない」
  • 「当面は構わないが、持続的ではない」

いずれももっともな指摘ではあるが、自然利子率との関係はどうなるのか。
日銀は10月、日本の自然利子率は概ねゼロ%であるとの推計を示した。
自然利子率ゼロ%の経済で長期金利に0.5-1.0%への上昇を許せば、これは金融引き締めだ。
どうやら白井教授の論点は、ここにはないようだ。
仮に金融引き締めになっても、長期金利を上昇させざるをえない事情があるのだろう。

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