渡辺努教授:シムズ提案はトリクルアップ

東京大学の渡辺努教授が、物価水準の財政理論FTPLに基づくクリストファー・シムズ教授の財政拡張案について解説している。
インフレ期待を醸成するための妙案が提案されており興味深い。

シムズ提案はトリクルアップ

渡辺教授はテレビ東京の番組で、これまでは放漫財政によるインフレ昂進をFTPLで説明する試みが多かったと語った。
逆にリフレを説明する例として、大恐慌後のルーズベルト大統領による財政出動を挙げている。
本編はメッセージのはっきりしない生煮えのようなプレゼンテーションだった。
ところが、ネット配信の方は思いのほか中身の濃い内容になっている。
教授は現行の金融政策によるアプローチと、シムズ教授が提案する財政政策によるアプローチの違いを語った。

「今までのアプローチは企業に先にお金を渡し、それが滴り落ちるように消費者にも賃金のような形で来るだろうというものだった。
今度は、消費者に最初にお金を渡して、そこを起点に景気を上げていこうというもの。」

量的緩和の欠陥

量的緩和とFTPLによるリフレとは似通ったところがある。
いずれも、政策決定者が無責任になることで市場の期待が喚起され成功につながる。
量的緩和の場合、中央銀行が無責任になることでゼロ金利制約の中でも効果が発揮されると言われてきた。
残念ながら、そうはならず、意図した市場の期待は喚起されなかった。
FTPLによるリフレは、政府が無責任になること(非リカーディアン型政府)を企図している。
これを国民が信じ、財政の悪化を期待すれば、インフレが進むだけでなく、政府債務の実質価値をインフレによって減らすことが可能になる。

量的緩和は主に円安のチャネルを通して輸出産業を潤わせた。
それが、他産業や従業員に十分に波及していくなら、安倍首相が強調してきたトリクルダウンは成功ということになる。
しかし、日本に限らず、この仕組みはうまくいかないらしい。
ジョゼフ・スティグリッツ教授は「誤り」と、ビル・グロス氏は「幻想」と呼んだ。

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