日本銀行

沼波正氏:QQEによってデフレ犯人説は否定された

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日銀で国際局長などを歴任した沼波正氏が、量的質的金融緩和政策と日銀の姿勢について厳しく批判している。
経済停滞デフレ犯人説は否定されたとし、日銀に誠実なコミュニケーションを求めている。

「QQEという『壮大な実験』で明らかになったのは、多くの識者が指摘しているように、日本経済の長期低迷の原因はデフレではなかった(『物価の持続的な下落という意味でのデフレではなくなった』ことは日銀も認めている)ということである。
言い換えれば、成長率の低さは、実力が発揮されていなかったからではなく、労働人口の減少や日本企業の競争力低下などを背景に、そもそも実力(=潜在成長力)が低下しているからだ、という事実である。」

沼波氏は、自身が編集委員会委員を務めた証券アナリストジャーナル2017年3月号の誌上で『金融政策をめぐる四つのM』と題して、政策議論の障害となっている日銀の考え・姿勢を批判している。
昨年の日銀の「総括的な検証」や世界的な財政政策待望論などにより、世間の金融政策への関心はだいぶ弱まったように感じる。
金融政策に限界があるのは当然のことだとしても、依然世界経済の底流には大きな金融政策の影響が及んでおり、これを過小評価するのは危険だ。

沼波氏は日銀OBらしく金融政策面でのタカ派の立場から現状の金融政策を論じている。
タカ派の立場で書かれたやや辛口すぎるようにも思えるコラムだが、内容は正論で満ちている。
わずか6ページのコラムであり、ぜひ原文を読まれることをお勧めしたい。
公表から1か月以上が経ち、バック・ナンバーの山に埋もれてしまう前に、少々詳しく紹介しておこう。
沼波氏が四つのMと呼ぶ政策議論の障害とはなんだろうか。

マネー・サプライ(MS)という亡霊

一つ目はマネー・サプライとインフレの関係だ。
Inflationとは膨張と言う意味であり、辞書によっては通貨膨張とも書かれる。
この意味は、私たちが普段使うインフレという言葉とはずいぶんかけ離れている。
私たちがインフレと言えば、それは物価上昇を強く意識したものだろう。
マネーの膨張をインフレとする考え方は古典的なマネタリストの考えによるものであり、インフレ=物価上昇という定義とは擦り合わなくなっている。
この点について、沼波氏はこう解説する。

「80年代以降、各国で金融自由化が進展するにつれて、マネーとインフレ率の関係が不安定化したため、中央銀行の操作目標も、MSの伸び率から、伝統的な短期金利に戻ったという経緯がある。
・・・
年8回の会合(FOMC)の後に毎回発表する長文の声明文(statement)を幾ら読んでも、マネーサプライのマの字も見つからないのはなぜであろうか?」

沼波氏は、異次元緩和が想定した《マネー・サプライ拡大がインフレを引き起こし経済を改善する》という考えを「俗説」と斬り捨てている。

(次ページ: 断絶した論理)