河野龍太郎氏:円安は輸出部門への国内からの所得移転

BNPパリバの河野龍太郎氏が、比較優位論をレクチャーしている。
供給制約の中で円安となっても全体のパイは増えず、家計・輸入部門から輸出部門に所得を移転するだけとし、むしろ小幅な円高のメリットの方が大きいと指摘した。

商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。お買い物される際には、必ず商品ページの情報を確認いただきますようお願いいたします。また商品ページが削除された場合は、「最新の情報が表示できませんでした」と表示されます。 河野氏はReutersへの寄稿で、トランプ政権の「プロビジネス」という性格は保護主義・コネ主義にすぎないと書いている。
トランポノミクズが2つの経路で米経済を害し、米国人を貧しくするという:

  • 輸入物価・国内物価の上昇
  • イノベーションの阻害

2つの経路を少し詳しく見ておこう。

比較優位は正しいが・・・

自由貿易が系全体の経済厚生を向上させるのは理論的にも現実的にも事実だ。
(あくまで経済厚生であって、総合的な幸福を議論しているわけではない。)
自由貿易は、輸入を通して安い商品の購入機会を与えてくれる。
系全体で需要が足りていれば、競争優位を持たなくとも比較優位をもつ産業は生き残る。
しかし、それでも今、逆行が始まっているのはなぜか。
河野氏はこう結論している。

「結局のところ、貿易問題の本質は、国内の所得分配の問題なのだ。」

所得は海外に流出したのではない

貿易を自由化すると、ある者は得をし、ある者は損をする。
全体で足せばプラスだからと喜べるものではない。
これを解決するには、所得再配分が必須だったのだが、それが不十分だった。
ただでさえ、この数十年はどちらかというと新自由主義が支配的な時代だった。
格差解消の方向への力学は働きにくかったかもしれない。
河野氏は欧米の例を挙げ、問題の深層をえぐっている。

「自由貿易でメリットを受けていたのは高いスキルを持つ労働者であり、デメリットを被っていたのは低いスキルしか持たない労働者ということだ。

・・・確かに貿易がきっかけではあるが、問題は、その失われた実質所得は海外に流れるのではなく、高いスキルを持つ労働者に流れることである。
・・・
歴史的に、いずこでも国民が貧しくなったのは、外国人や外国企業が恩恵を受けているからだという主張がなされてきた(トランプ大統領の主張も同じだ)。」

一つ付言すると、「高いスキルを持つ労働者に流れる」というのは語弊があるかもしれない。
もしかすると既得権益を持った労働者に流れたのかもしれないからだ。

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