榊原英資教授:中国が転べば危機が起こりうる

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ミスター円こと青山学院大学 榊原英資教授が1997年のアジア通貨危機直後に持ち上がって消えたアジア版IMF(いわゆるアジア通貨基金)構想について回顧している。
FRBの金融引き締めが新興国での通貨危機の引き金になる懸念については、その原因と対応策について話した。

「あの時、IMFは危機を正しく理解できていなかった。
日本はそれに怒ったんだ。
だから、アジア自身によるIMFを作ろうと考えた。」

当時、財務官を務めていた榊原教授はNikkei Asian Reviewのインタビューでこう回顧した。
教授はアジア通貨基金構想について関係各国に説明に回り、ASEAN諸国と韓国から支持を得る。
ところが、盟友であるはずの米国と眠りから覚めつつあった中国から反対を受ける。

「ローレンス・サマーズ元米財務長官(訳注:1999年の長官就任前で副長官だった時期と思われる)は米国のアジアでの金融面での影響力低下を見越し、強くこの構想に反対した。
中国も支持を渋った。
日本がリーダーシップをとるのがいやだったんだろう。」

Nikkeiがこうしたインタビューを行った理由は、今、アジア通貨危機の再来が危惧されているからだ。
アジア通貨危機の前も、日米など低金利国からアジア諸国へ莫大なマネーが流入していた。
これが米国の「強いドル政策」により逆転し、危機は起こった。
幸い現在、米国は「強いドルは国益」としながらも、強すぎるドルにNGを出している。
為替政策が通貨危機の引き金を引くとは考えにくい。
しかし、金融政策が代わりに引き金を引くかもしれない。
早期の金融引き締めに執念を燃やすFRBは、利上げを進め、バランスシート縮小にまで着手しようとしている。
多くの人が、2013年のバーナンキ・ショックを思い出すはずだ。
あの時はテーパリングの可能性に言及しただけで、アジアからマネーが先進国に回帰した。

前アジア開発銀行総裁である黒田日銀総裁は2014年アジアで維持不可能な信用拡大の懸念があると指摘している。
PIMCOは昨年、アジアでのドル建て債務の急増に懸念を示している。
こうした信用拡大が危機を現実のものとするのだろうか。
榊原教授はその可能性を否定しなかった。

「中国経済が転べば、次の危機が起こる可能性がある。
中国の経済力は極めて強大となったため、もしも急激な悪化が起こるとアジアに悪影響が及ぶ。」

教授が心配するのは、世界第2位の経済に成長した中国を起点とする危機だ。
中国政府が取り組む構造改革は容易ではないとし、バブルが崩壊すれば他のところに飛び火しかねないと警告している。
その一方で、アジアは20年前から大きく成長したとも語っている。

「中印は大きな経済となり、東南アジアも頑強になった。
外貨準備も積み上がっている。
さらに、チェンマイ・イニシアティブなど地域協力の枠組みもできている。」