早川英男氏:長期金利ターゲット引上げの是非

元日銀理事の早川英男氏が、日銀の金融政策の今後を予想している。
年内にも長期金利ターゲット引上げの議論が起こるだろうという。

「問題は金利目標の引き上げが投資家の利害に影響することだ。 」

早川氏は毎日新聞に、長期金利ターゲットの引上げについてこう語った。
本来「短期決戦」で臨むべきだった異次元緩和は、方向転換が後手に回り「市場に無用の混乱をもたらした」と回顧。
昨年、日銀が「総括的な検証」によって方向転換を図ったことで、市場は落ち着きをとりもどし、他要因も重なり物価も緩やかに回復し始めたという。
物価が上昇に向かえば、金融緩和も微調整をとの声が出てくる。

「物価上昇率は年末にかけて1%に近づいていき、現在は0%程度としている長期金利の操作目標を引き上げるかどうかを検討する必要が出てくるだろう。」

仮に物価上昇率が1%で名目長期金利が0%とすれば、実質長期金利は-1%ということになる。
日本の長期均衡金利は、ここまで実質長期金利を低位に維持しなければならないほど低いのか。
そうした声は、金融安定を案じる観点からも出て来ようし、為替レートへの影響という観点からも向けられよう。
にもかかわらず、早川氏は2つの例を挙げて、長期金利ターゲット引上げは容易ではないと語る。

  • 「長期金利が上昇し、国債価格が下落する。
    資産運用に占める長期国債の割合が高い地方銀行などは(国債価格下落で損失を抱え)大きなダメージを受けるだろう。」
    昨年10月の金融システムレポートによれば、1%ポイントの金利上昇で銀行保有の円債時価は7.5兆円(うち地域銀行と信用金庫分で5.1兆円)下落するという。
  • 「財務省も国債発行計画で想定していた金利水準が上がるため、発行計画も目算が狂ってくる。」
    日経が報じた財務省の試算によれば、金利が1%ポイント上昇すると2020年度の国債費が3.6兆円増えるという。
確かにこうした課題は頭の痛いものには変わりないが、本質的でないと言えばそうとも言える。
前者は過去の投資活動を優先すべきか、将来を優先すべきかという話にすぎない。
過去円債投資した人たちを守るために、将来の投資家を犠牲にすればいいのだろうか、との疑念もあろう。
後者については、債務者と投資家のどちらを救うかである。
債務者が困るから、債務者が恣意的に金利を押し下げるというのはいかがなものだろう。
現状が財政従属にはあたらないと繰り返してきた政府・日銀の発言とも食い違う話になる。

世界経済が大崩れしなければ、近いうちに内外から長期金利ターゲット見直しの声が強まろう。
なにより市場が督促するように金利を押し上げていくだろう。
しかし、上げ幅はそれほど大きくならないはずだ。
1回の上げ幅は1/8-1/4%程度と小幅なものとなり、累積しても高々1%程度にとどまるのではないか。