早川英男氏:正常化すべきは金融でなく財政

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元日銀理事の早川英男氏が、遠からず訪れるであろう景気後退期に備えて財政政策にマージンを作っておくべきと主張した。
金融緩和は継続せざるをえないとしたものの、CPI伸び率上昇とともに長期金利ターゲットの再設定(短期化)を行うべきと主張した。

好景気と低インフレの共存がいつまでも続くわけがない。
本来は今のうちにマクロ経済政策を景気刺激から中立に戻すべきであり、物価が上がっていない中で金融引き締めは難しく、財政を緊縮的にすることが教科書的な対応だ。

早川氏がReutersに語ったこの濃密なコメントを正確に解釈できる人が何人いるのだろう。
筆者も正しく解釈できているかわからないが、フレーズごとに早川氏の本心を推測してみよう。

「好景気と低インフレの共存がいつまでも続くわけがない」

好景気と低インフレの共存とは、世が世なら理想と考えられるような経済だ。
理想と考えられることを裏返せば、なかなか長くは続かないということになる。
では、どちらが崩れるのか?

  • 両方が崩れる: 景気後退と高インフレ、すなわちスタグフレーション
  • 景気が崩れる: 景気後退と低インフレ、すなわちこれまでの前進から一歩後退
  • 物価が崩れる: 好景気と高インフレ、しかし現状これを予想する人は皆無に近い

早川氏の考えは2つ目の景気後退入りであろう。
2012年12月から始まった景気拡大局面が今月も継続すれば58か月となり、いざなぎ景気(1965年11月-70年7月)の57か月を上回る戦後2番目の長さとなる。
早川氏は、出口戦略開始を2020年半ば以降と見ており「今からあと3年も景気拡大が続くと考えるのは、現実的ではない」と言う。
つまり、次の景気後退の時、日銀のアクセルはすでに目いっぱい近くまで踏み込まれており、さらに踏み込む余地はほとんど残っていないのだ。

「本来は今のうちにマクロ経済政策を景気刺激から中立に戻すべき」

景気が後退期に入ってしまう前にアクセルを加速も減速もしないところまで戻しておくべきとの主張だ。
もちろんその目的は、後に再びアクセルを踏み込むべき時にマージンを残しておくためである。

「物価が上がっていない中で金融引き締めは難しく」

実は早川氏は以前「現状を見れば物価が上がらなくても経済は良くなっている」と発言したことがある。
このことから早川氏が物価至上主義でないことは明らかだ。

では、何で物価が上がらないから金融引き締めができないのだろう。
おそらくは、物価目標を捨てられない日銀の組織の論理を述べたものだろう。
この読みは玄人らしいものだが(政治に変化が起これば)絶対のものではないかもしれない。
また(後述するとおり)日銀には金融政策運営上もう一つインフレ率を高めておきたい理由がある。

(次ページ: 財政を緊縮的にするのが教科書的対応)