日銀:意図せざるヘリコプター・マネー

日本銀行
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日銀の雨宮正佳理事が、長期金利ターゲットの歴史と理論について講演した。
そこで語られた4つの論点には、少々不穏な先行きを感じさせる点が挙がっていた。(浜町SCI)

長期金利コントロールは目新しくない

日銀理事の雨宮氏は11日都内で講演し、9月の日銀による「総括的な検証」にともない導入した長期金利のコントロールについて語った。

「一般に、中央銀行による金利操作については、『短期金利の操作はできるが、長期金利の操作はできないし、すべきではない』とされてきました。
このため、イールドカーブ・コントロールはこのような伝統的考え方と対立するのではないかとの受け止め方もありました。
しかし、歴史を紐解きますと、こうした「伝統」が明確に定着したのは、実は、最近20年ほどの短い期間に過ぎないということがわかります。」

雨宮氏が言いたいことは、長期金利は操作できない・すべきでないという考えは歴史の浅いものだから、日銀の長期金利ターゲットにも温かい目を向けてほしいということだろう。
ある面もっともな弁明であり、ある面言い訳じみている。

20年というスパンは日本での金利自由化の歴史と似た長さだ。
金利が規制されていた時代、金利がコントロールされていたのは当たり前のことだ。
まず、「20年」という期間についてはたいした意味を持たないと考えてよい。
ならば、どこまで遡ればいいか。
金融危機というテーマならベン・バーナンキ前FRB議長が権威だろう。
バーナンキ氏は日銀の長期金利ターゲット導入を受けて、第2次大戦中と直後のFRBによる先例を紹介し、そのリスクを指摘していた。

英米では財政支援を目的とした

雨宮氏が今回紹介したのも、まさにそのFRBの事例と同時期の英国の事例だ。
(いずれも60年以上前の話であることに留意したい。)
この2つの事例から、雨宮氏は2つの命題を提示している:

  • 中央銀行による長期金利の抑制は(よほどのインフレがない限り)可能。
  • 米英の事例は財政支援が目的だが、日銀は物価安定が目的。

事実上の金融抑圧が長期にわたって継続する日本では、前者を信じる人も多かろう。
日銀がどこまでも国債を買うつもりなら、少なくとも国債利回りはコントロールできるはずだからだ。
問題は後者だ。
米英の事例では、政府の資金調達コストを低減することを目的として長期金利が抑制された。
しかし、異次元緩和の場合、目的はリフレであった。

雨宮氏は、米英の事例をこう紹介する:

「債務残高の発散を防ぐ方向に作用したと言えましょう。
しかしその一方で、金融政策は、国債買入れという国債管理政策に制約され、十分な役割を発揮できませんでした。」

(次のページ: 拭えない疑念)