岩村充教授:貨幣保有者のための中央銀行

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岩村充 早稲田大学教授は、ビットコイン等仮想通貨が「価値安定」に注力すれば「将来的に中銀による通貨発行の独占が崩れる可能性もある」という。
その過程で、中央銀行は通貨を害する政策から通貨の安定を図る政策に回帰するだろうと期待する。

ビットコインの価値の源泉は電気代

「通貨としてのビットコインの強みは、独自の価値の源泉を持っていることだ。
外からの価値の取り入れをせず、『マイニング(採掘)』と呼ばれる行為に価値の源泉を見いだしている。
具体的には、取引の正しさを証明したマイナー(採掘者)には、その報酬として、新たなビットコインが与えられる。」

岩村教授はReutersインタビューで、ビットコインの強みをこう説明した。
(岩村教授は『中央銀行が終わる日 – ビットコインと通貨の未来』の著者。)
まだ少し抽象的なので、貴金属に喩えて説明した部分を読むと真意がわかる。

「採掘費用が市場価格を作り出しているという意味では、ビットコインは金や銀に近い。
ビットコインの場合、主な費用はマイナーの電気代と言えよう。」

ビットコインのマイニング(ブロック・チェーンを検証するためのコンピュータによる計算)には設備投資とランニング・コストがかかる。
設備投資・賃料はさほど大きくなく、計算は無人で行えるから、主なコストは電気代となる。
(しかも初期の設備投資は投資実行時にsunk costになってしまう。)
マイニングで費消される電気代等採掘費用がマイニングで与えられるビットコインの価値より低いうちはマイニングが続けられる。
結果、ビットコインの価値は電気代等採掘費用と擦り合うことになる。

実は、この構図は金・銀などの貴金属でも同じことだ。
金・銀の価格から考えて儲かるところまで採掘が進む。
つまり、金・銀の価格と採掘費用は擦り合うことになる。

金・銀なら文鎮になるが

こうした説明に違和感を感じる人は少なくないだろう。
金・銀には長い間かけて培われた市場・相場観があり、その相場感に見合うまで採掘が進み、採掘費用が上がってきた。
一方、ビットコインの方にはそうしたものがなく、採掘費用は価値を示すのではなく、価値の下限を示すものにすぎないとの指摘だ。
こうした考えは常識的なものではあるが、理論的にはうまく違いを説明できていない。
金・銀の価値だって、通貨や宝飾品の材料としての、いわば錯覚に近い価値を見なければ現状ほどの価格はつかないはずだ。

費用が「価値の源泉」たりうるのは、その費用で生み出された価値に対して需要が存在することが前提となる。
ただただ無駄遣いをすれば、その成果につく価値が上昇するものではない。
金・銀なら投資家がその価値への幻想を失っても、なんとなれば文鎮にでもすれば、さぞかし比重の大きなコンパクトな文鎮になるだろう。
しかし、仮想通貨の場合、何が残るのだろう。
もちろん、この比較も理論上は程度の問題でしかないのだが、程度の差は小さくないようにも感じる。

(次ページ: ビットコイン発行上限の盲点)