小峰隆夫教授:隠れた増税と反成長戦略

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経済企画庁調査局長などを歴任した小峰隆夫 大正大学教授が、選挙のたびに緩んでいく日本政治の財政規律について心配している。
一向に進まない財政再建を前に「政治家と国民の良識が問われ」ているという。

選挙になると、消費税をめぐる各党の政策はシフトダウンし、最も民意に迎合的な党の政策に収斂することが繰り返されるようになった。

小峰教授が週刊東洋経済で書いている。
政治や政党の勢力図は、大昔のようにイデオロギーや信念に基づく尖鋭な対立ではなくなっている。
自分たちが仕切りたいという我の強い政治屋たちがマーケティングを駆使して票を取り合うゲームになってしまった。
大票田を狙う大政党となれば、どうしても中道を挟んだ幅広いセグメントをターゲットとせざるを得ない。
小選挙区制で2つ、3つの政党がそうしたセグメントを狙い始めれば、おのずと口にできる政策は似通ってくる。
そこで勝つには、選挙民に媚びを売るような政策を揃えざるをえない。
財政ポピュリズムの大流行りだ。

程度の差こそあれ《失われた10年以降》私たちはこういう財政運営を見続けてきた。
中には米国からのプレッシャーという特殊要因もあったが、決してそれだけではない。
本来なら(一定の債務を抱えた政府なら)財政政策とは経済安定化政策として行われるべきものだ。
つまり、経済が悪い時に下支えし、いい時には冷やす、景気の平滑化であるべきだ。
ところが、日本の財政政策は(小泉政権などを除けば)ただただ下支えばかりしており、当然のことに債務問題に解決の兆しは見えない。

増税延期の陰で隠れた増税が

小峰教授は、こうした財政ポピュリズムについて問題を2点呈示している。
1つ目は財政再建への悪影響なのだが、2つ目が投資家にとって是非とも知っておくべき点になっている。
この2つめとは、家計と企業が負担している社会保険料の引き上げだ。

「この隠れた増税は家計の可処分所得を減少させるとともに、企業収益を圧迫している。
まさに反成長政策そのものだ。」

選挙で増税を言えば票が獲れないから、選挙をやらなくても引き上げられる社会保険料を引き上げているのだ。
小峰教授はこれを「隠れた増税」と呼んでいる。
まさに「税こそ民主主義」を真正面から体現する安倍政権の政治姿勢といったところか。
この社会保険料といい、金融抑圧によるインフレ税といい、(意図しているのかはわからないが)国民に正しく伝わっていないことが多すぎる。

(次ページ: 財政再建先延ばしで景気はよくならない)