佐々木融氏:米長期金利低下リスクが円高リスクに

Share

JP Morganの佐々木融氏が、米利上げと米長期金利の間の関係を勘違いしないよう説いている。
過去の利上げ後、長期金利が下がる事例が続いており、見誤れば為替の動向を逆に予想してしまうという。

「ドル円相場にとって最も大きいリスクは、米長期金利の低下となる可能性がある。
米連邦準備理事会(FRB)が利上げ局面にあるからといって、米10年国債金利が上昇するとは限らない。」

従来から円高ドル安を予想している佐々木氏はReutersへの寄稿で、ドル安要因として米長期金利低下の可能性を挙げた。
2日に発表された米労働省による5月の雇用統計では、非農業部門雇用者数増こそ市場予想を大幅に下回ったものの、失業率・平均時給とも市場予想なみだった。
この発表を受けて、債券市場と株式市場は引き続き相反するように見える動きを続けている。
佐々木氏は「長めの方の金利が低下しつつある一方で、米株価が上昇した(ニューヨークダウ、S&P500ともに最高値を更新した)ことは何を意味しているのだろうか」と自問する。

S&P 500指数(青、左)と米長期金利(赤、右)
S&P 500指数(青、左)と米長期金利(赤、右)

「株価が上昇したことに鑑みれば、市場は5月雇用統計をことさら弱いとみたわけではないと言っても良いだろう。
だが一方で、失業率がここまで下がってきても、賃金が上昇する気配がなく、逆に伸びが鈍化してきている状況を見て、市場参加者はすでに感じ始めていた
『インフレ率は上がらないのではないか』
という疑念を確信に変えるに至ったのかもしれない。」

米市場では、大統領選後いわゆるリフレ・トレードの考えが広まり、株を押し上げた。
一方で、債券市場はその動きを疑問視しつづけている。
最近では、リフレ・トレードが終わったとの声も増えつつあり、米国株市場の見通しを二分している。
佐々木氏の読みが正しいなら、リフレ・トレードは終わる。
株式市場がそれを受け入れれば、株式市場は調整に向かうことになる。

「今回の利上げ局面では、米10年国債金利は1回目の利上げが行われた2015年12月から低下基調をたどり、約半年後には約100bp程度低い1.32%まで下落している。

市場参加者が本格的に賃金、インフレ率の上昇はないとの確信をさらに強めた時、米10年国債金利の現状からの低下幅が予想以上に大きくなる可能性は排除できない。そして、それはドル円相場の下落幅が予想以上に大きくなる可能性を示唆している。」

FF金利(青)と米長期金利(赤)
FF金利(青)と米長期金利(赤)

2015年12月の利上げ後、長期金利は低下した。
その後2回の利上げ後も同様の現象が起こっている。
短期金利を引き上げたから単純に長期金利も上昇すると考えるべきではない。
長期金利の動きははるかに複雑な要因で動いており、むしろFF金利引き上げは「Buy the rumor, sell the fact.」を誘っているように見える。

なお、佐々木氏は金利とドル円の関係について以下のように見ている。

「ドル円相場は、5月中旬以降の日米10年国債金利差との相関に沿った動きを示している。
日米10年国債金利差が10ベーシスポイント(bp)変化すると、ドル円は1.8円程度動く関係となっている。」