佐々木融氏:米ドルが年初来最弱になったワケ

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JP Morganの佐々木融氏がReutersへの寄稿で、今年に入って米ドルが弱含みを続ける理由を4つ挙げている。
JP Morgan Chase全社の力が結集しているような響きがあり興味深い。

佐々木氏は、年初来の主要10通貨の中で最もパフォーマンスが弱いのが米ドルだと指摘し、その原因を分析している。
ちなみに、トランポノミクス要因は4つのうちの1つでしかない。
とても平易で勉強になる原文なので、全体をつぶさに説明するのは控えたい。
ここでは1か所とても印象深いくだりを紹介しよう。

「当社は、この『国境調整』(トランプ大統領の国境税ではなく共和党の案)が現状案のまま議会を通過する確率は非常に低いと見ている。
28日に予定されている上下両院合同本会議でのトランプ大統領の演説でも具体案を伴う『驚異的な計画』は出てこないだろう。」

税制に限らず、トランプ政権がぶち上げた政策の多くが実現に時間がかかる、または、実現が難しいとJP Morganは見ているようだ。
トランプ・ラリーにおける米ドル高には期待先行の感が否めないため、その期待が剥がれることがドル高を巻き戻してしまう。
トランプ大統領が再びぶち上げた「驚異的な計画」も、人事・政策が進まない中で苦し紛れに口にしたような印象がある。
本当に「驚異的な」ものを出せるのか、市場関係者も内心びくびくしているはずだ。

トランポノミクスで円高というロジックも本当に信じていいのか怪しいところだ。
財政政策、それも真水が本当に打ち出されるなら、来年以降短期的に景気が改善するのは間違いない。
しかし、米政府が借りた借金を返すつもり(リカーディアン型政府)である限り、つけはいつか返すことになる。
短期的に経済成長が押し上げられても、長期的な成長率、あるいは潜在成長率が改善する保証はない。

完全雇用の中で財政政策を打つことでインフレが進み、FRBが利上げを進めるとの解説もある。
しかし、FRBが名目金利を引き上げたところで、実質金利が上昇しなければドル高にはならない。
名目金利上昇はドル高要因だが、物価上昇がドル安要因であるため、勝負はその差である実質金利に委ねられるのだ。

米長期金利(青)、実質金利(赤)、BEI(緑)

トランプ勝利で実質金利もインフレ期待も上昇した。
それは現在も継続しているものの、インフレ期待が高止まりしたまま、実質金利はピーク・アウトした感がある。
トランプ政権は再び実質金利を上昇させるような成果を上げられるのだろうか。