佐々木融氏:利上げしても長期金利は上がらない

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JP Morgan佐々木融氏が、日米長期金利の動きからドル円相場を占う考え方の欠陥を指摘した。
今後は2年物金利差の方が有用になるとしたほか、政治要因が金利差を上回る可能性もあるという。

「経験則でもそうではないし、理論的にもそうではない。」

佐々木氏はテレビ東京の番組で、日米長期金利差とドル円相場が連動するとの考えは正しくないと指摘した。

「理論的には、長期金利は潜在成長率と期待インフレ率とリスク・プレミアムの合計。
利上げをすることで、先行きの成長率期待やインフレ期待が抑えられれば長期金利は上がらない。」

佐々木氏は前回のFRBの利上げサイクル(2004-06年、合計4.25%ポイント)を回顧する。

米10年債利回り(青)とFF金利(赤)

このサイクルでFF金利が4.25%ポイント上昇する間、長期金利はわずか0.66%ポイントしか上昇しなかった点を紹介した。
背景について、米金利が他の先進国の金利に比べ高いことを挙げた。
米国債利回りが上昇すれば投資妙味が増し、世界の投資家が買いに入るため、金利上昇が抑えられるという。
同様の傾向が今回の利上げサイクルでも見られるという。

米10年債利回り(青)とFF金利(赤)(近時)

今後、長期金利を引き下げる要因として、佐々木氏は地政学リスクや、最近米債を売り越した日本勢の買戻しを挙げた。

これまで見てきたのは、あくまで長期金利差である。
佐々木氏は金利差と為替の相関を否定しているわけではない。

「通常は2年物金利差との相関が強いというのが常識だが、このところ10年物金利差の方が相関が強かった。
最近再び2年物金利差の相関の方が強くなってきた。」

FRBがテーパリングを終えた今、米金利については、2年物の方が10年物より金融政策の影響を受けやすい。
佐々木氏は、金融政策についての市場の見方が為替に影響しやすくなると予想する。
その上で《3月利上げを含めた来年末までのFRB利上げ回数》と《ドル円相場》の相関から、今後のドル円レートを外挿している。

  • 現状のレートは4回(あと3回)が予想されている
  • 5回(あと4回)なら115円
  • 6回(あと5回)なら120円

市場では年内だけであと2回以上との予想も多いから、来年末までであと3回(つまり現状のレート)というのは弱気に感じられる。
つまり、金利差だけを見るなら、円安ドル高が進むように見える。
佐々木氏は、そうした見方を認めながらも、金利差以外が支配する展開にも言及する。

「しばらくはこうした(金利差による)シナリオで動くだろう。
今月末にかけてフランス大統領選、日米経済対話、米財務省為替報告、米暫定予算切れ、北朝鮮問題などの政治要因があり、金利差との相関が崩れるリスクは十分ある。」