佐々木融氏:円安が裏切られる材料

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JP Morganの佐々木融氏が、足元で緩やかに進む円安ドル高の動きについてコメントした。
現状は円安要因の勝った環境にあるとしながら、円高に切り返す可能性も残っているとし要因を挙げている。

「6月半ば頃から主要国中央銀行から相次いでタカ派的なコメントが続き、金融政策正常化に向けた動きが進む可能性が示唆されると、各国の長期金利は上昇基調をたどった。
一方、日銀は引き続きイールドカーブ・コントロール政策により10年国債金利をゼロ%近辺に固定している。
このため、日本とその他主要国との金利差が拡大し、為替市場では円安が進んだ。」

佐々木氏はReutersへの寄稿で最近の円安の原因を分析した。
市場コンセンサス通りの説明だ。
先行きについても「日本とその他主要国の金融政策の方向性が違うとまでは言えないが、温度差がかなり出てきたことは否めない」と円安有利を認めている。
JP Morganでは現状230ベーシスの日米金利差がさらに30ベーシス拡大すると予想しており、現在の相関関係から予想するとその場合のドル円は117.30円程度になるという。
2017年末のドル円予想は従前105円としていたが、現在の環境が続くなら修正が必要になるという。
その上で、円安予想が裏切られる可能性についても列挙している。
  • 相関は一定ではなく、最近も感応度が低下。
  • 地政学的・政治的リスク。
  • IMM投機筋ポジションのショートが年初なみの高水準。
  • 過去の急激な円安局面とは異なる環境。
  • 日銀の追加緩和は予想されておらず、金融政策の方向性が違うとまでは言えない。

現在の状況が続くなら、円安を予想するのが素直な考えだろう。
しかし、佐々木氏の指摘ももっとも。
一本調子の円安を予想するのにも説得力がない。
とは言え、米経済の強さが保たれたままでFRBが金融引き締めを継続していくとすれば、それは新たな円安をもたらすサプライズになっていこう。

では、大幅な円高をもたらすイベントとは何であろうか。
日本の金融政策・経済環境にほとんどマージンがない中、やはり米国側のイベントとなろう。
最大の可能性は、多くの慎重派が唱える循環的不況の到来ではないか。
リーマン危機後の底から始まった米景気回復は先月9年目に入り、いつ循環的な停滞期に入ってもおかしくない。
仮に循環的な停滞に入れば、FRBはバランスシート縮小を見送り、利下げにUターンするだろう。

FRB利上げがめざましくドル高をもたらしたとは言えないから、利下げが大幅なドル安をもたらすとは限らない。
しかし、バランスシート縮小については、やや長期金利に織り込まれているかもしれない。
さらに、金融緩和へのUターンというイベントは、心理的に大きな効果を持ちうるかもしれない。

メイン・シナリオは極めて緩やかな円安ドル高だろう。
しかし、リスク・シナリオの存在を忘れるのは無謀すぎる。