佐々木融氏流「王様は裸だ!」

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JP Morganの佐々木融氏が怒っている。
改善されない日銀の市場とのコミュニケーションが、経済を誤った方向に導くのではとの焦りが見て取れる。

「市場参加者との対話がうまくいかない状況が続くようだと、将来何かしらのショックが発生した時に、日本の金融市場、金融システムが予想以上のダメージを受ける可能性もある。」

佐々木氏はReutersへの寄稿で、日銀の市場とのミスコミュニケーションが経済・市場に及ぼすリスクに言及している。
日銀出身の佐々木氏だが、今回の書きぶりには苛立ちと怒りが感じられる。
昨日の黒田総裁会見を見ながらため息をつく姿が目に浮かぶようだ。
そして、実際にそうした感慨を持った市場関係者は決して少なくないだろう。

佐々木氏の寄稿では現在の日銀の政策運営に対する「7つの疑問」が述べられている。
ここでは7つ目の疑問を紹介しよう。

「7)市場機能を損ねることのコストを軽視し過ぎてはいないか。
また、もう1つ気になるのは、黒田総裁が記者会見でETF購入について、押し目買いの機会を失わせているとの批判もあるが、と質問された際、
『債券でも株でも、値が大きく動かないと利益が出ないかもしれないが』
と答えた点だ。
最近、日銀からこうした発言が聞かれることが多い気がする。
つまり、
『市場が動かなくなると市場参加者は利益が出せなくなるので、自分のことを考えて文句を言っているのだろう』
というニュアンスの発言だ。」

市場参加者が単に損得だけで文句を言うのなら、これほど日銀に対しての風当たりが強くなったりはしない。
確かに金融市場が動かなければ、債券トレーディングなどはやれることがなくなってしまう。
しかし、ほとんどの金融機関では、より幅広い活動を行っている。
長期金利ゼロ、ボラティリティを抑え込まれた市場では、何一つ考えることなく株式のロング・オンリーで利益を上げるチャンスとなる。
ただでさえ日銀は多額のETFを買い込んでいる。
この状況を崩すように金利やボラティリティの上昇を招きかねない文句を言うはずがないということになる。

最近の日銀の語り口には《自分たちは日本のために仕事をやっているのであり、市場参加者の私利私欲のためではない》との響きが感じられる。
しかし、多くの市場参加者からすれば、彼らが自身の面目・私利私欲のためにやっているように映っている。
彼らが主張するいくつかの根本的な命題のうち、複数が成立していないのが明白だからだ。
これが苛立たしいのだ。

佐々木氏の批判はもっと本質的だ。
ある市場が利益のとれない場となれば、市場は廃れてしまう。

「日銀が日本経済の活性化のために金融政策を行っているのであれば、経済の重要な構成要員である企業の資本調達の場の機能を奪って良いとは思えない。
国債市場に関しても、先進国で最も大きな対国内総生産(GDP)比での国家債務を抱えている日本の国債市場から、参加者を追い出すことが本当に正しいことなのか疑問に思う。
日銀は市場機能を損ねることのコストを軽視し過ぎているのではないか。」