ロバート・シラー:経済変動を知りたければ・・・

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市場の上げ下げを見つめてきたロバート・シラー教授が、ナラティブ経済学の必要性を説いている。
教授の言う「ナラティブ経済学」とは、経済学に人々が伝える「ナラティブ」(物語、ストーリー)の観点を取り入れたものだ。

「ナラティブを理解する能力は万人で等しいわけではない。
そして、経済学者は最もナラティブの重要性を認めるのが下手な人種だ。
しかし、歴史家の多くでさえ認めないのは、歴史的な出来事を経験した人たちがどんなストーリーを頭に浮かべていたかを知ることなしに、歴史を理解できないということだ。」

シラー教授はシカゴ大学への寄稿で、経済学者の無関心を嘆いている。
ナラティブのうち人々の大半が賛同するものが歴史や市場に作用している。
しかし、学者は社会全体からすればごく一部分にすぎないところだけに着目して語りたがる。
それは一部の経済指標かもしれないし、一部の政治家や軍人の言動かもしれない。
市場や社会はそれだけで動いているわけではない。
むしろ、通常は雑音とされてしまうような名もない人たちの思いがドライバーになっていると考えるべきではないか。

その変化は《いつ》起こるのか

「どうしてナラティブが経済学に影響するのか?
たとえば、不況や景気後退を理解しようとするときは、なぜ人々が支出をやめたのかを理解する必要があるからだ。
・・・
景気が後退したから支出を取りやめたと言う人もいるかもしれないが、それでは景気後退が始まった理由はわからない。
そうした出来事の触媒にナラティブは関連しているはずだ。」

経済学者は後講釈で変化の原因を解説して見せることはできる。
それは何のための解説であろう。
多くは将来に役立てるためであろう。
しかし、ここで経済学者、そして市場関係者は壁にぶち当たる。
仮に、おぼろげに先行きが予想できるとしても、細かな経路、とりわけ《いつ》変化が起こるのかを予想できない。
過去触媒となったナラティブについて学んでこなかったことが一因だ。

(次ページ: インフレ進行というナラティブ)