ロバート・シラー:偉大な都市の条件

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資産価格の実証的研究で2013年ノーベル経済学賞を受賞したロバート・シラー教授が、都市部の住宅価格高騰について解説している。
住宅価格高騰は住宅保有者にとっても不利益をもたらすため、安価な住宅供給が必要と説いた。

「世界の大都市では、住宅は中くらいの所得の人たちにとって法外に高くなりつつある。
都市の不動産価格が上昇するにつれ、住民の中にはそこを離れることを強いられる人が出てくる。
・・・
そうした人たちが去ると、高価な都市は高所得世帯の土地となり、独自の価格形成を始めることになる。」

シラー教授はProject Syndicateで「地域的格差」の発生する過程を説明した。
都市から追い出された人たちは人的・文化的関係まで奪われ、中間層の抜け落ちた地域では階層間の軋轢され生みかねないという。

シラー教授が引用した2016年のDemographia International Housing Affordability Surveyによれば、住宅の割高感が世界一の都市は香港。
住宅価格対世帯所得は18.1倍に及ぶ。
世帯所得のすべてを18年分払っても住宅が買えないほど住宅が高いのだ。
国際比較が可能なほどには精緻な数字ではないだろうし、都市によって住宅の質・大きさには差があるだろうとシラー教授は言う。
一方で、それだけで説明できるほど小さな差でもないという。

同調査によれば大阪・神戸・京都は10百万人超の都市の中で最も住宅価格が手ごろなのだという。
住宅価格対世帯所得比率は3.4倍と、確かに香港に比べればだいぶ低い。
年収の3.4年分なら手が届きそうだ。
東京・横浜は次に手ごろな都市で、同比率は4.7倍だ。
この倍率から見て、マンション価格のようであり、米国・オーストラリア・カナダなどと比べると事情は異なるのだろう。
一方、香港などとは似たような比較なのかもしれない。
世界の不動産は、日本の不動産価格が緩やかに上昇する間に、ずいぶん急激に上昇してきたようだ。

住宅高騰を防止したいなら新たに住宅を建てればよい。
ただし、新たな住宅地が開発できることの他に、既存の住民の理解が必要だ。

「既存の高価格住宅の保有者は、そうした建設を支持しようとは思わない。
自身の投資の価値を減らしてしまうからだ。
・・・
結果、地方政府も供給拡大について許可を与えたがらないかもしれない。」

新たな産業・質の向上・人材もともなわないのに不動産価格だけが高騰すれば、バブルに発展しかねず、結局は住民にとっての不利益となる。
シラー教授は安価な住宅を供給し、閉鎖的な都市にならないようにすべきと説く。

「多くの場合、高い住宅価格対家計所得比率を持つ都市は、供給制限のある都市より『偉大な都市』でないことが多い。
共感、人間的刺激、特に多様性に欠けている。
そしてそれが危険な反目の温床になるのである。」