ロバート・シラー:倒産で稼いだリーダーの国債

資産価格の実証的研究で2013年ノーベル経済学賞を受賞したロバート・シラー教授が、金利上昇の気配について言及した。
米国債にかかわるとんでもない心配が増えつつあると吐露した。

金利上昇の真の原因

シラー教授がスイスFinanz und Wirtschaftのインタビューで、人間の心理と投資・経済について話している。
投資・経済の世界にはナラティブ心理学で説明されるような現象が至るところで起こっているという。
例えば、定見のまだない超低金利の原因。
シラー教授はこう語る:

「(超低金利を)2007-08年の金融危機に求めることは自然なことだ。
現在のすべてのものが金融危機のせいだとするナラティブが優勢なためだ。
しかし、金利低下傾向はもう30年超も続いている。
だから単に金融危機のせいではない。」

シラー教授は、金利低下の主因が技術革新と関係しているのではないかと推測している。
格差拡大やロボットに仕事を奪われる脅威が人々を貯蓄に走らせ、安全資産に見える債券を買い上がってしまったのではないかという。
言うまでもなく、債券価格の上昇は金利の低下と同義である。

次期大統領の経歴が不安を煽る

金利低下が信じがたいほど長く続いたため、トランプ勝利がなかったとしても、金利上昇はいつでも起こりえたと教授は言う。
そして、トランプ氏が勝利した今、あらたなナラティブが人々の中に芽生えつつある:

「米国債デフォルトへの懸念が増えつつある。
私は確率の高い話とは思わないが、ドナルド・トランプは何度も倒産で稼いできただけに心配されるかもしれない。
トランプは米国債の規律を守るような人物ではない。」

人的資本まで含めたリスク管理を

投資推奨を尋ねられ、シラー教授は「ありふれた話だが」と断った上で、分散ポートフォリオを推奨した。
教授は「ありふれた話」と謙遜したが、実際には少しひねった話になっている。
投資家の人的資本まで含めた分散を勧めているのだ。
例えば、自動車メーカーの社員は自社の株を買うべきでないという。

「株式市場を職業に対する保険メカニズムとして使うとよい。」

とし、自動車セクターの業況に直接影響を受ける自動車メーカーの管理職には理論上
・自社の株のショート
・自国のショート
が有効だと説く。
一方で、こうしたポジションが裏切者の印象を与えることも認め、代わりに自社や自国以外に投資することを勧めている。

勤務先の株をショートすることは、一歩間違えばインサイダー取引になりかねず得策ではない。
でも、自社以外、しかも他セクターの株に投資するなら何の問題もない。
自国をショートする、例えば債券ベアファンドに投資するのは少々えげつない話かもしれない。
でも、財政規律のとれた外国国債に投資するなら、極めて一般的な投資行動だ。
要は、自分の職業も含めて《すべてを一つのバスケットの中に入れない》ということだ。

シラー教授は、個人資産について、米国より割安な欧州に多くを投資していると明かした。